《よく分かる世界金融危機》世界金融再編の行方と日本勢の勝算は


 金融危機の最中、世界で金融大再編の嵐が吹き荒れている。

特に米国では業界地図が一変した。メリルリンチを吸収したバンク・オブ・アメリカ、ベアー・スターンズとワシントン・ミューチュアルを買収したJPモルガン・チェース、ワコビアを救済合併したウェルズ・ファーゴの三つの銀行が一段と巨大化した。今後の焦点はシティグループの出方だ。ワコビアとの合併合意後にウェルズ・ファーゴに横取りされ、孤立感さえ漂う。時価総額も2006年の4分の1になり、米銀トップから4位へ滑り落ちた。

シティは証券化業務拡大がアダになり、サブプライム関連の傷が特に深い。一方で、新興国を含む国際拠点網は、時価総額世界最大の英HSBCにも勝るとも劣らない。シティには他の大手行と共に公的資金が注入される予定だが、どう危機を抜け、再編の主導権を握っていけるか。ウルトラCは、独立路線を行くゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー(以下モルスタ)との連合だが、他社との合併と同時に資産解体の思惑も潜む。日本法人・日興シティの扱いも俎上に上るだろう。

今回の世界的金融再編には久々に日本勢も名乗りを上げた。特に耳目を集めたのが三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下MUFG)だ。流動性危機に陥っていたモルスタへ90億ドルの巨資を投じた。ただ、モルスタ株が売りたたかれ続け、公的資金注入の話も出てきたため、当初の全額普通株出資の契約が2度変更され、最終的に全額優先株出資に。その分、MUFGの出資毀損リスクは減退したが、当初目指した業務戦略的な意味合いは後退した。普通株への転換権があり、株価上昇次第で最大21%の筆頭株主となる可能性は残るが、いつになるかわからず、「中途半端な救世主」の立場が続く。

これに対して野村ホールディングスは、破綻したリーマン・ブラザーズのアジア、欧州部門を買収。それゆえ比較的少額で約8000人の人材を獲得した。しかし、日本の証券会社が世界的投資銀行を買収するのは初めてであり、スムーズに融合を進め、実力を十分引き出せるかは今後のマネジメント次第だ。かつてメリルが山一証券を継承した際には、旧山一の顧客が逃げたが、M&A助言業務などでリーマンの持つ世界の優良顧客を野村がつなぎ留められるかどうか、が成否を握っている。


<KEY WORDS>
優先株
 配当や会社清算時の残余財産を普通株に優先して受ける権利を有する一方、議決権が制限される株式。発行企業から見れば、配当コストがかさむ反面、経営に口出しされずに資本を厚くできるメリットがある。一定期間後に買い戻せる条件をつけておけば、財務体質に余裕が出たときに買い戻して、資本関係を元に戻すこともできる。株価次第で普通株へ転換できる条件をつける場合もある。

(週刊東洋経済)

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