《よく分かる世界金融危機》米国の景気はどこまで悪化するのか

「失業者が街にあふれているわけでもなく、金融業界を除けばさほど悲壮感はない」。米ニューヨーク・マンハッタンの大手金融機関で働く日本株セールスの担当者は米国経済の現状をこう話す。それでも乱高下を繰り返す株式相場を見ると、先行きにはどうしても慎重にならざるをえない。「クリスマス商戦に対するエクスペクテーション(期待)はゼロ」。

公的資金の資本注入などが奏功し、たとえ大手金融機関の連鎖破綻が回避できたとしても、米国景気の後退はすでに始まってしまった……。実体経済の底割れへの恐怖が株価の下振れリスクを増幅させている。

ニッセイ基礎研究所によると、2009年の米国の実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス1%となる見通し。四半期ベースでは08年7~9月期から09年7~9月期まで5期連続マイナスを見込む。中でもGDPの7割以上を占める個人消費の腰折れが鮮明になっており、全体の足を引っ張る公算が大きい。

米国の「過剰消費、過小貯蓄」をこれまで支えてきたのは住宅価格の上昇。住宅を買う人が増えれば、家具などの内装品が売れる。光熱費などの支払いも必然的に膨らむ。ローンで購入した住宅の値上がり分を担保に資金を借りる「ホームエクイティローン」と呼ばれる仕組みも普及。土地が上がるほど借り入れ余力が高まり、それに伴って消費へ振り向けられる資金が増えた。

数年前に米国を訪れたエコノミストが自らの体験談を語る。「米国のある住宅街では当時、路上駐車がやたらと目についた。実はその多くが3台目のクルマだった……」。

「バブルは崩壊して初めてバブルとわかる」とは、グリーンスパン前米国連邦準備制度理事会(FRB)議長が残した言葉。バブルは決していつまでも続かない。住宅価格の値下がりで環境は一変。従来の“資産効果”に代わって“逆資産効果”が消費をむしばみ始めた。

住宅価格に底打ちの兆しは見えない。S&Pケース・シラー住宅価格指数(20都市対象)は06年7月をピークに下落が続く。08年7月は前年同月比マイナス16・3%と過去最大の落ち込みを記録。前年同月比減は07年1月から19カ月連続で、しかも下落率は月を追うごとに拡大している。

住宅投資も08年4~6月期で10四半期連続減少。「住宅投資の減少が7四半期以上連続すると、個人消費はマイナスに転じるのが通常のパターン」(ニッセイ基礎研究所の土肥原晋主任研究員)。

金融資産に占める株式の割合が3割弱と比較的高いだけに、株安も個人消費には逆風だ。自動車販売は急減。7月のガソリン需要も前年同月を6%近く下回る。

冷え込みは高額品消費にとどまらない。第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストは、米国の清涼飲料大手ペプシコが3300人の人員削減などのリストラ策を発表したことに注目する。ペプシコはコカ・コーラと並ぶ「コーラ」の2大メーカー。コーラといえば、多くの米国人がこよなく愛する炭酸飲料だ。

日本食レストランではすしを注文した人が、飲み物にコーラを頼むのもごく当たり前。永濱氏は「コーラのような�生活必需品�まで節約しなければならないほど家計が追い込まれてしまった証左」と見る。


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