徳島は「阿波おどり」で揉めてさらに衰退する 地方を滅ぼす「本当の敵」は常に「外」にいる

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このような中で、年に一度の大イベントである阿波おどりや、再開発事業といったもので互いに利権を奪い合い地元でもめればもめるほど、それは地元が衰退し「その分だけ他の地域に吸い上げられる」と認識したほうがよさそうです。写真は2009年に撮影したものですが、今の徳島市の中心部は残念ながら、あまり変わっていません。

シャッター通りとなった徳島市中心部のアーケード街(筆者撮影)

実は、徳島市と対極にある都市も数多くあります。代表的なのが、筆者が前から注目している福岡市です。

地元のおじさんたちのもめごとが地域を衰退させる

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日本の他の地域の商店街が「百貨店よ、出て行け!」などと大型店を排斥しようとし、地域内対立を深めていた時代に、福岡市では天神地区にある百貨店や商店街などが互いに連合して「都心界」を組織しました。そして、合同で、隣接する都市の商業中心地に「天神に来てください」といった「エリア営業」をかけて、しだいに優位性を築いていきました。

また、祭りでも大いに参考になります。もともと「博多祇園山笠」は、「博多部」で長らく続いてきていた伝統行事でしたが、「福岡部」にあたる天神から参画することを受け入れ、「飾り山笠」を建てるなどしています。

こうしたこともあり、もともとは新興商業エリアにすぎなかった天神は、今や九州一の商業中心市へと発展。1889(明治22)年時点では徳島市よりも人口が少なく全国15位だった福岡市は、現在全国5位の大都市へと成長しています。

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徳島市の実情をみれば、市の経済力も財政力も、伝統行事とのかかわり方も含め、内輪でもめている猶予はもうありません。

一刻も早く外を見て、新たな地域経済の立て直しにとりかからなくてはいけません。簡単に言えば、次の100年に徳島は「何で飯を食っていくのか」「何に力を注ぐのか」を決めることです。それらは、官民の関係なく、地元のさまざまな組織のトップの重要な役目です。

ひとことで言えば、「地元のおじさんたちのもめごとが未来を衰退に至らしめる」のは、何も徳島市に限った話ではないのです。

「誰と戦い、誰と組むべきなのか」。より合理的な判断と行動が熱望されます。

<参考文献> 鍛冶博之「近世徳島における阿波藍の普及と影響」
木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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