春名風花「今、学校に行きたくないあなたへ」 だから、僕は君に生きていてほしい

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――春名さんは、いじめに関するインタビューでも、「いじめている子」にフォーカスした発信を続けています。どういう思いからなのでしょうか?

悪い情報しか発しない送信機があったとしたら、受信機が壊れないかぎり、やりとりは止まりません。

かりに受信機が壊れたとしても、今度はそのとなりにある別の受信機に対象が移っていくだけ。だったら、送信機をどうにかするしかないって思うんです。

それに、「いじめたい」という気持ちは、人間誰しも心のなかに持っていると思います。だからこそ、「いじめている子が悪い」と単純に結論づけてしまうのがイヤなんです。

春名風花(はるな ふうか)/2001年神奈川県生まれ。女優、声優。「はるかぜちゃん」の愛称で知られ、舞台やツイッターなど幅広い場で表現活動を行なう。著書に『少女と傷とあっためミルク』(扶桑社)など(写真:不登校新聞)

僕自身、これまでいろんなバッシングをあびてきました。ツイッターも昔から使っていますが、攻撃的な返信は今も飛んできます。ただし、僕を傷つけてくる人も、日常生活では別の顔を持っている。それに気づいた瞬間、「僕が見ているのはその人の一部でしかないということを忘れちゃいけないんだ」と思うようになりました。

もちろん「いじめられている子」は痛いし、つらいし、「いじめている子」を憎んでもいいと思う。

けれど、第三者が考えるべきは「いじめている子」のことで、送信機をどうやって止めるかという結論に向けて、みんなで知恵を出し合うことなんじゃないかなって。

そもそも、狭い空間に30人も詰め込まれて、気の合わない子もたくさんいるのに、そのなかで誰とでも仲よくやっていけるスキルを身につけましょうという制度自体がおかしいと思います。「いじめている子」「いじめられている子」「いじめを見ている子」「いじめを止められない先生」のことを悪く言う前に、制度は悪くないのかということです。で、僕は悪いと思っています。

キャラづけする雰囲気がダメ

――制度の問題というと、具体的には?

選択の自由があまりになさすぎます。義務教育は、誰もが平等に教育を受けられなくてはならないのに、ひとたびいじめが発生したら「いじめられている子」が転校しなければならない状況さえ出てくる。これは平等じゃないですよ。

僕は今、単位制高校に通っています。だから、なおさらそう感じるのかもしれませんが、いじめにおける最大の問題は「人間関係が固定されてしまうこと」だと思います。固定した集団のなかでは、リーダーっぽいとか、いじられやすいとか、一人ひとりをキャラづけしてしまう雰囲気ができやすい。そうならないためには、授業ごとにクラスメートが入れ代わるような、柔軟な環境を義務教育段階から導入したほうがよい、というのが僕の考えです。制度を変えるというのは、そんなかんたんな話じゃないと思います。では、どうすればいいのか。「演劇」を授業の一環として取り入れること、これが僕のおすすめです。ふだんの自分と異なる立場を演じることで、いろんな気づきが得られるし、「閉鎖された空間内に流動性を持たせる」ということにもつながりますから。

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