たった一つの会議が歴史を動かした! 三谷幸喜監督が語る歴史の本当の面白さ

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――議長になろうとは思わなかったのでしょうか?

議長は絶対にないですね。

――記録係になりたかったとか?

記録でもないですね。傍聴人みたいな感じです。当事者になるのは嫌なので、傍聴していたいのです。

――三谷さんは歴史ものの作品を数多く発表してきましたが、歴史に魅了されるポイントとは?

僕が好きで取り上げる歴史上の人物というのは、大概が天才と言われる人や、歴史を変えたと言われる人たちの影にいる人々です。時代を変えた人よりも、その裏にいる人、もしくは彼に倒された人、それから歴史に取り残された人に興味があります。だから幕末でいえば、どうしても幕府方の人間になってしまいますし、海援隊よりも新撰組のほうに興味がある。

それから、『コンフィダント・絆』(2007年上演)という舞台には、ゴッホやスーラ、ゴーギャンが出てくるのですが、実質的な主人公は彼らと一緒に行動していたけど名前の残らなかったシュフネッケルという画家です。彼がなぜ美術史に名を残しているかというと、ゴッホの描いた黒猫の絵に手を入れちゃったということだけです。彼は学校の先生ですが、何てことをしてくれたんだという、ただそれだけで歴史に残っている人。けれども僕はそういう人に興味があるのです。

この間やった舞台の『おのれナポレオン』でもそうです。ナポレオンがセント・ヘレナ島に流されたときに、彼を監視したイギリスの管理官でハドソン・ロウという人がいるのですが、その人の人生にすごく興味を持ちました。映画『アマデウス』でいうところのサリエリの役割を担っているのですが、ああいうメインストリームにいない人たちに目が向きますね。

丹羽長秀に注目!

――『清須会議』では誰に目が向くのでしょうか?

『清須会議』の中で僕がいちばん好きなのは、秀吉でもなく、勝家でもない。(小日向文世演じる)丹羽長秀ですよ。彼は歴史でもほとんどフィーチャーされていないですし、大河ドラマでも大抵その他大勢の武将の中のひとりになってしまう。でも本当はこの『清須会議』でも、長秀がいちばんのキーパーソンだと思う。ドラマとして見たときも、最も揺れ動くのは彼だし、本人はたぶん意識はしていなかったと思うのですが、彼の決断が結果的に歴史を動かすわけですからね。それなのに彼自身はそれに気づいていないという面白さもある。僕はそんな丹羽長秀にあこがれています。そういう人たちの物語を掘り起こしていきたいというのが、僕が歴史好きになった理由のひとつですね。

(c)2013 フジテレビ 東宝
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