世界が希望に満ちあふれていることを若者に知ってほしい--映画『レッドクリフ』監督=ジョン・ウー

歴史小説『三国志』の人気エピソード「赤壁の戦い」を題材にした映画、『レッドクリフ』(現在公開中)。監督のジョン・ウー氏とプロデューサーのテレンス・チャン氏に三国志や映画制作への思いを聞いた。第1回目はジョン・ウー氏。

--三国志の中で、最も好きな人物は誰ですか。

若いころは趙雲が好きでしたが、今は周瑜です。歴史に関する本をいろいろ読んだところ、実は周瑜は非常に魅力的なキャラクターであることがわかったんです。友人を大切にし、音楽の才能があり、ロマンチストで、胸襟も広い。どんな困難な局面にでも冷静に対処できるすばらしい人物です。『三国志演義』で描かれているような、ねたみ深く、ずる賢い性格ではありませんでした。私たちは「男」として、周瑜を見習うべきでしょう。あと、諸葛孔明も好きですよ。

私のこれまでの作品では悲劇的な要素を重視していましたが、今は人生観も変わりました。もっと前向きです。現在、世界各地で戦乱が起きているし、経済は低迷している。中国大陸でも多くの変化が起きていますが、そのスピードが速く、ついていけない多くの若者が未来を悲観し、自分を見失っている。世界はこれから、周瑜や諸葛孔明のように、活力や明確な目標を持った「モデル像」を必要としている気がします。それによってこの世界が太陽と希望に満ちあふれていることを若者たちに知ってほしい。だから、史実では、周瑜が赤壁の戦いの2年後に死んでしまいますが、映画では、周瑜の死は描きません。

--黒澤明監督の『七人の侍』に似たシーンが出てきます。

映画を撮る前には必ず、『七人の侍』を繰り返して見ます。特に最後の雨中の決闘シーン。リズム、雰囲気、感情表現、すべて傑作です。あらゆるアクション映画の模範であり、私にとって教科書のようなものです。

--世界中の人々に三国志を楽しんでもらうために、どのような工夫をしましたか。

脚本を書く最初の段階から世界で通用する映画にしたいと思っていました。日本の皆さんが三国志を好きなことはもちろん知っていますよ。中国の国民も三国志のストーリーや人物が大好きです。韓国や東南アジアの国々の人々もこの物語のことをよく知っています。さらに、私は欧米の人々にも、この映画を中国の歴史を知らなくても楽しめるようにしたいと願ったのです。

今回の「赤壁の戦い」をめぐる人物関係は、日本や中国の観客なら、いちいち説明しなくてもすぐわかるでしょう。でも欧米人はわからない。たとえば、人物の名前一つをとっても、周瑜(Zhou Yu)、趙雲(Zhao Yun)など発音は非常によく似ていて、混乱してしまいます。このためストーリー作りの早い段階で、彼らが赤壁の戦いに至るまでの歴史的なエピソードはシンプルにして、むしろ人物描写に焦点を当てました。夢、ユーモア、愛、友情、勇気、団結といったものは万国共通ですからね。

欧米の多くの人々が孫子の兵法を読んでいます。でも映像で見たことはないはずです。観客は本物の戦法とはどういうものかを知りたいはず。だからこれを上手に、精緻に、ファンタスティックに描写できれば、多くの人々の目を画面にくぎ付けにできると考えました。

--前後編がヒットしたら3作目は考えていますか。

難しいと思いますが、もし本当に撮るとしたら、「赤壁の戦い」の前よりも、その後の話を撮りたい。諸葛孔明は赤壁の戦いの後、10年にわたって大活躍しますから。

趙雲の存在も気になる。趙雲は命を顧みず劉備の子供を救い出したじゃないですか。赤壁の戦いの勝利で、張飛や関羽は昇進したが、趙雲は劉備からおろそかにされ、低い地位のままだった。だが、彼の劉備に対する忠誠心は昔のままで、しかも劉備の死後には劉備の息子を育て、彼が劉備の後を継ぐのを助けた。この息子には才能はありませんでしたが、趙雲はずっと仕えていた。これは日本の武士道精神に似ている(笑)。

--中国大陸の制作スタイルは香港やハリウッドとどう違いますか。

まず香港は自由度が高い。監督が撮りたいものが撮れる。ヨーロッパと同じように、監督は小説家のように自由な創作活動ができる。予算は少ないが、スタッフは限られた予算の中で工夫して、少しでもよいものを生み出そうとする。限界もありますよ。香港は狭いのでロケできる場所があまりない、観客の目に新鮮な場所を確保するのが難しいのです。

ハリウッドで撮影するうえで最大のアドバンテージは資金が豊富なことです。労働組合の制度もあり、すべてのスタッフがプロフェッショナルで、高いレベルであることを保証してくれます。でも制度的には非常に複雑です。ストーリー、役柄、アクション場面の処理なども含め、綿密なマーケットリサーチを経て作られる。ハリウッドは脚本の作成に非常に長い時間をかけます。考慮しなければならない要素が多すぎるからです。日本では内容やアクションなどの面白さを要求されるが、アメリカではあまり暴力的な表現は許されない。それぞれの国に特有の観客の好みがある。だからグローバル市場で受け入れられるためには、ハリウッド映画はストーリーや登場人物のデザインやイメージが似通ってしまうのです。

さらに映画会社の社長やプロデューサー以外にも多くの人が口を挟むので、ミーティングだけで消耗してしまう。ミーティングが多いうえに、内容はほとんど同じようなものばかり。出席者は自分勝手な発言ばかりして、背後でさまざまな根回しや駆け引きを繰り広げている。だから撮影に入る前に消耗し切ってしまって、撮影に全力投球できないんです。結局、多くのことを考慮しすぎるあまり、制作された映画はまるで工業製品のようになってしまいます。監督も個性や輝きを少しずつ失っていく。ハリウッド映画は商品としては完成度が高いかもしれませんが、監督の個性はあまり表現できませんね。

私が中国大陸に戻って、撮影を始めたとき、今までとは違うという感覚を得ました。監督であると同時に作者である自分に戻れた感じがしたのです。自分の感覚を頼りに、感情を投げかけ、自分の世界で映画を撮る。そうすることで、完成した作品は自分の個性そのものになります。しかも現在の中国大陸のスタッフのレベルは高く、みんな勤勉ですよ。

--ジョン・ウー監督の映画に必ず登場するのが、二丁拳銃とハトです。『レッドクリフ』でも登場人物は二丁拳銃さながらに両手に1本ずつ刀を持ち、またハトも出てきました。拳銃とハトへの監督の思いを教えてください。

ハトと二丁拳銃は私のシンボルです。『レッドクリフ』は古代戦争を描きましたが、同時に反戦の思想も含んでいます。白いハトは物語上でも重要な役割を果たしていますが、同時に平和の象徴でもあるのです。来年公開予定の後編では、さらにハトの意味を色濃く皆さんにわかってもらえるように描いています。

二丁拳銃に関して、ファンの皆さんは非常に興味を持っているようですね。後編では趙雲と周瑜が1本ずつ刀を持ちます。二人で「二丁拳銃」です。それは彼らの友情の象徴であり、私のシンボルである二丁拳銃の象徴でもあります。

(テレンス・チャン氏のインタビューは11月9日掲載予定です)

(撮影:尾形文繁)


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