世界を虜にする「最先端アーティスト」の衝撃 オラファー・エリアソンを知っていますか?

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オラファー・エリアソン
今、世界が最も注目する現代芸術のアーティストの1人。 1995年ヴェネツィア・ビエンナーレに初参加以来、シドニー・ビエンナーレ、サンパウロ・ビエンナーレ、横浜トリエンナーレなど、世界的な国際展に招かれている。エリアソンのオフィシャルサイトはこちら
(写真:Mathis Wienand/Getty Images)

身体が空間をどのように認識するのか――。これがエリアソンが追求してきたテーマだ。エリアソンはこれまでも、テクノロジーを使って自然の中に「現象」を生み出し、鑑賞者に驚きと体験を提供してきた。

エリアソンは2003年、ロンドンの近現代美術館テートモダンで公開した『ウェザー・プロジェクト』で人工の「太陽」を作り出した。

発電所だった建物を改装して完成した同館には、かつて大型発電機が置かれていた「タービン・ホール」と呼ばれる巨大な空間がある。エリアソンはここを霧で充満させ、オレンジ色で照らした。人々は座ったり寝転がったりしながら、人工の太陽と、天井に設置された鏡に映る自分自身を見つめる体験に酔いしれた。

さらに2008年には、アメリカ・ニューヨークのイーストリバーに4つの人工滝を建設し、街を行き交う人々が見慣れている景色に「異物」を出現させた。ここでエリアソンは、滝からの距離によって速さが変わって見える流水を使い、街を見渡すニューヨーカーの知覚を揺さぶった。

フィヨルド・ハウスは、フィヨルドの中にレンガ作りで建てられているのだから、これもまた自然の中の「異物」だ。こうした作品は、エリアソンがドイツ・ベルリンに構えるスタジオから生まれている。彼はそのスタジオを「実験室」と呼ぶ。

『ウェザー・プロジェクト』をはじめ、作品について語るエリアソン(動画:テートモダン美術館のポッドキャスト「TateShots」から)

「水」は脅威の存在でもある

フィヨルド・ハウスは、ヴァイレのコンセプトに基づく港の基本計画の一環として建設された。街や港、水――周囲の環境とのあらゆる関わりは、建物が物語るストーリーの一部となる。自然を作品に取り込むエリアソンとっては、設計において「水」が大きなインスピレーションになったことは想像に難くない。

だが「水」は、ヴァイレにとって必ずしもポジティブな効果をもたらすものではない。都市に甚大な被害を及ぼしかねない存在だからだ。

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