「メディア起業家」の時代がやってくる ビジネス書のカリスマ、ダニエル・ピンク氏に聞く

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上から目線ではなく、読者の反応を力にする

セールス全般に当てはまることだが、本の場合は特に、売り手と受け手の関係が上下ではなく、対等の会話をするようになっている。そういう構造だと作家がわかっていなければ、そこにあるアイデアを理解するのに苦労することになる。

特に重要なのは、人々が興味深い質問を持っている点だ。実は、この本を書くきっかけも、読者からの問いかけから出てきた。前作でモチベーションについて取り上げ、ある種のインセンティブがうまく機能しないことを指摘したら、「セールスの場合はどうか」と聞かれた。それで面白いと思って調べてみて、セールスの本を書くことにしたのだ。

今後の台風の目は、教育とヘルスケア

――最後に、今後、あなたが書きたいテーマは?

皆から聞かれるが、次の本のことはまだわからない。

ただ最も変化が速い分野は、現時点で教育分野だと思う。たとえば、ある種のオンライン教育が利用可能になっているが、特に米国では、大学の学位がどの程度価値があるかという疑問が出てきている。グーグルなどは採用時に成績や学歴を聞くのをやめてしまった。というのは、データをとったところ、学校や大学の成績では、入社してから仕事ができるかどうかの参考にならないことがわかったからだ。したがって、教育分野には多くの変化が起こると思う。

ヘルスケアも、ものすごく大きな変化があると思う。その多くに情報が関係している。スマートフォンを見てほしい。世界中の約50億人が今では、ポケットにこういう小型コンピュータを持っている。50億人というのは、とてつもない数で、これはすごいことだ。それがどういうことを意味するのか、本当に計り知れない。

日本も高齢化社会のひとつのテストケースだ。高齢者も若者も大勢いると、どんなことが起こるのか。80歳でとても健康で、この先20年健康だったとしたら、その人はどんなことをするのか。定年後、40年間もぼんやり座って過ごすなんて、私には考えられない。当事者にとっても、社会にとっても、それはいいことではない。

世の中では、いろいろな興味深いことが起きている。だから、自分よりも賢い人々のところに行って、そのことを尋ねてみれば、いろいろとわかってくると思う。

(撮影:今祥雄)

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