オバマ大統領時代の相場を占う-カギを握る財務長官人事、ガイトナー、タイソン、サマーズ、バフェットなら安心だが、ボルカーだと…

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ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
チーフ・ファイナンシャル・ストラテジスト 松尾健治

 2008年11月5日(水)日本時間午後1時頃(NY11月4日夜11時頃)、米大統領選挙でオバマ氏が選挙人数を大統領選勝利に必要な270人を獲得した(その後オバマ氏349人vsマケイン氏162人になった)。さらに米議会選でもオバマ氏の属する民主党が上院で過半数を維持、加えて下院でも過半数を制して、民主党圧勝となった。

 上院が「民主党54人(←選挙前49人)、共和党40人(←同49人)、無所属2人(民主党系)、未定4人」、下院が「民主党251人(←同235人)、共和党173人(←同199人)、未定11人」(日本時間11月6日0:30AP通信)である。オバマ氏は1961年8月4日生まれの47歳と史上5番目に若い大統領であり、米国史上初の黒人大統領となる。2009年1月20日に正式に第44代大統領に就任する。  

 民主党圧勝となったのは、ブッシュ現大統領やマケイン氏が属す共和党政権が10月の株価暴落や懸念されるリセッション(景気後退)をもたらしたと見なされていることが大きい(オバマ氏もそう主張してきた)。米国民としては、この機会に、何とかして1929年の株価大暴落・世界恐慌再来を防ぎたい気持ちがあるとされる。また、1929年恐慌当事の大統領はハーバート・C・フーバー第31代大統領で彼が共和党だったことも心理的な要因として働いたともされる(フーバー大統領…1874年8月10日生まれで1964年10月20日没、1929年3月4日から1933年3月4日まで大統領)。

 1932年の大統領選挙でフーバー大統領(共和党)が惨敗し、代わって1933年から大統領となり世界恐慌を克服したのが、フランクリン・D・ルーズベルト第32代米国大統領で彼が民主党である(ルーズベルト大統領…1882年1月30日生まれで1945年4月12日没、1933年3月4日から1945年4月12日まで大統領)。そして、株高で好景気である「ゴルディロックス(Goldilocks Economy、理想的な景気状態)」を構築したとされた1993年1月からのクリントン前大統領の民主党政権への期待も国民にはあると思われる。ルーズベルトやクリントンの属す民主党にかける米国民の期待、それがこの民主党圧勝をもたらしたとも言える。

 大統領選と議会選挙で民主党の圧勝となったが、これを市場はどう判断するだろうか?

 オバマ大統領誕生の時間に開いていた日本株市場では、新しい大統領があっさり決まったことで今後の経済政策が進展するとの期待が高まり、株高となった。ブッシュ米大統領が大統領となった2000年11月7日の選挙では、民主党のゴア氏とかなりの接戦になり、これは株安材料となっていた。為替については、米ドルがユーロに対し1.2950米ドルから1時間ちょっとで1.2794米ドルへ上昇した。しかし当の米国市場では、大統領選を受けた11月5日(水)にNYダウは前日比-489.75米ドル/-5.09%の9,135.53米ドルと過去12番目の下落幅で10月30日来の安値となった(10月27日に8,175.77と2003年4月1日来安値)。米ドルもユーロに対し11月6日(木)日本時間深夜0:30に1ユーロ=1.3116米ドルまで下落した(←11月4日1.2981米ドル)。ただこれはあまりに短い話である。

 大統領選の結果後の11月5日(水)日本時間夜22:15(NY午前8:15)に発表された9月米ADP雇用統計が前月比-157千人と予想-102千人を超える雇用者数減少だったこと(←9月改定値-26千人←9月速報値-8千人、米雇用統計発表日の2日前に発表され米雇用統計と政府雇用者数が違うが90%の相関)、11月6日(金)日本時間0:00(NY時間11月5日午前10:00)発表の10月米ISM非製造業景況指数(総合)が前月比+5.8の44.4と予想47.0を下回り1997年7月からのデータで最低となったこと(←9月50.2、景況感中立は50)、さらに11月5日(水)日本時間0:00(NY時間11月4日午前10:00)発表の9月米製造業受注が前月比-2.5%と予想-0.8%を超える減少となったこと(←8月改定値-4.3%~2006年10月来の低下率←8月速報値-4.0%~2006年10月来の低下率)など、米国のファンダメンタル(経済の基礎的条件)に売り材料がそろったのも要因だろう。

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