高リターン続く、米株ファンドのこれから 選別相場の兆しも

拡大
縮小

決算シーズンで明らかになったこと

企業のパフォーマンスの格差拡大にはいくつかの理由がある。過去3年間、企業は上昇相場の流れから恩恵を受け、業績に魅力のない企業でも株価を引き上げるために自社株の買い戻しや増配を実施できた。米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和策で超低金利が続いたため、企業は低コストで債務の借り換えが可能になり、質の悪い財務状況の企業が良好に見えるという効果もあった。

今回の第3・四半期の決算発表では、どの企業の売上高や利益率の見通しが良いか悪いかという点が明らかになった。選別色の強い投資マネージャーは、良好な見通しの企業を選び、さえない見通しを示した企業に背を向け始めている。

例えば、米ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングスは10月24日、コスト高と搭乗率の低下を背景にアナリスト予想を下回る決算を発表し、株価は4%も下落した。JPモルガンとレイモンド・ジェームズ、エバーコア・パートナーズの各アナリストは、同業他社が増収を記録する中で弱めの決算を発表したユナイテッドの業績予想を下方修正している。

デルタ航空やサウスウエスト航空は、ビジネスクラス客の増加や競争環境の低下で株価の上昇が続き、デルタは年初から123%高とユナイテッドの45%高を大きく上回っている。

衣料品業界では、「ティンバーランド」や「バンズ」、「ザ・ノース・フェイス」などの自社ブランドの強い需要を受けて決算が予想を上回ったVFコープが、10月21日に5%高の最高値をつけた。

VFコープの年初来の上昇率は42%だが、ギャップやラルフ・ローレン、アバクロンビー・アンド・フィッチは売上高が目標に達せず、新学期シーズンに大幅な値引きに頼ったことから市場平均を下回っている。ギャップの株価は年初来19%の上昇にとどまり、アバクロンビーは22%下落した。

「困難な」銘柄選択

最も有望な企業がすでに割高で、明らかに割安銘柄が見当たらない中、ファンドマネージャーは「隠れた宝石」を探し出すのがますます難しくなっていることに不平を漏らす。

「相場が上昇し、成長に対して割高な対価を支払うことは避けたいので、選択が難しくなっている」と、T・ロウ・プライス・ブルーチップ・グロース・ファンド のポートフォリオ・スペシャリスト、クレイグ・ワトソン氏は指摘した。

ワトソン氏のファンドは、年初から43%上昇しているアマゾン・ドットコムを組み入れた。強固な経営管理体制と利益拡大の可能性が理由という。

ワトソン氏は「われわれのような長期的視点を持つなら、今割高に見える企業も2、3年後にはそうは見えないだろう。その会社がしっかりと経営されているからだ」と話した。

ジョン・フォックス氏が共同運用する9億0200万ドルのFAMバリューファンドは年初から28%上昇し、S&P500種を2ポイント上回った。フォックス氏によると、見返りを求める投資家が株式に向かったことでバリュエーションは低下した。42銘柄を組み入れたファンドがことし新規に追加したポジションはわずか4銘柄だ。「2011年の秋には数週間のうちに12銘柄を購入したのに」と同氏は振り返った。

(David Randall記者)

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