「少子高齢化で社会が破綻」は大いなる誤解だ 就労者1人あたりの負担は必ずしも増えない

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繰り返しますが、日本の人口減少と高齢化は不可避です。しかし、それだけを取り出して悲観的になる必要はありません。ボリューム層である高齢者をどう支えるかという視点より大事なのは、彼らを支える側としてどう機能させられるか、生きがいを持って働ける環境作りができるか、という部分でしょう。真の働き方改革とはそういうものではないでしょうか。

働く意欲のある高齢者にとって働ける場所があるということは、健康維持や現在増加中の熟年離婚防止にも波及します。なぜなら、働くことは、人とのつながりを生み、自己の社会的役割を実感できる機会を作り出すからです。高齢男性の孤立死や高い病気罹患率は、ひとえにこの社会的役割の欠落によるものです。誰の役にも立っていないと感じた瞬間、人間は肉体より先に心の死を迎えるのです。同時に、高齢有業率の改善は、年金の支給開始の後ろ倒しや支給資格の見直し、高齢者の医療費自己負担増など社会保障費の問題をも解決できるきっかけともなります。

追加就業希望者にも注目

もうひとつ、最新の就業構造基本調査で新たに加えられた「追加就業希望者」というデータにも注目してみます。現在、就業者でありながら、さらに追加で働きたいという人たちを指します。いわば複業希望者数にも該当します。

2017年の実績では、全体就業者の6%以上の男女合計424万人の追加就業希望者がいました。20~40代の働き盛り世代で約50万人ずつ均等に存在します。今後、複業解禁する企業の増加でこの数はさらに拡大するでしょう。

追加就業と新規就業のいわゆる「未活用労働力」は合計1287万人に達し、これは現在の労働力を最大2割近く押し上げる力があります。これは、人口の絶対数は減っていても、実質の就業人口は増え続けることを意味します。これこそ、超高齢国家で非婚少子化国家である日本が、目指すべき方向性ではないでしょうか。

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