エリートなのに自己評価の低い息子の扱い方 “親”という文字通り、木の上に立ち、我が子の選択を見守ろう

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子の進路選択に関して、木の上に立って見守る距離感で

貴女は成人している息子さんがそこで馴染めるか、行く前から不安を抱いています。これが大企業だったら、その不安は応援に変わっていたでしょう。この辺の空気を息子さんは読んでいると思います。私が息子さんに同情心を覚えた理由です。

貴女はこのご時勢に、なぜそこまで、息子の大企業就職にこだわるのでしょうか?世間体?もしそうでしたら、世間の人は、貴女が思っているほど貴女のご長男の就職先に関心を持って生きているわけではない、と考えるべきです。将来が安泰だから?この神話はもはや遠い昔の話です。

貴女は荒れ、ご自身やご主人を責めた不安定な状態にもなって息子さんの就活に干渉されたことを、それでも親として言うべきことは言えてよかったと言っておられます。ここで私はあえて厳しく申し上げますが、貴女はこの点だけは変わる必要があります。

三年後の転職先が貴女にとって不安のない会社で、本人にとっても自信の持てる会社と約束されているわけではありません。もしまた大企業でなかったら、貴女はまた悩み、荒れ、干渉するのでしょうか。若い頃の経験は無駄がないといいます。ステップアップしていく第一歩の会社勤務と位置づけ、息子さんが希望を持って勤務できるよう、息子の決定に従い応援する母親であるべきです。

貴女には親という漢字の如く、木の上に立って見ているほどの息子さんとの距離が必要です。あなたの息子さんは、自分の決定に責任を持てる、信じるに足る社会人として、飛び立とうとしているところなのですから。

私自身、子供たちの選択で不安や不満を抱くことは、4人もおりますので絶えずあります。私はその不満などを一応は伝えても、それは一応で強力ではありません。さまざまな事情が絡み、縁と運が作用しての決定だと思うからです。
そして、一旦決まったら、その事に対して全面的に応援します。私の応援など祈りのようなもので何の力もありませんが。

子供が健康でいるだけで、感謝できることの理由

有名大学や大企業に行く人だけが、成功や幸福の切符を手に入れるわけではありません。と、頭では理解できてもなかなか納得できないのが凡人の弱い所です。進路とは別に、長く親子をしていれば、子供が親の想いとは逆の選択をする場合もままあり、気を揉むものです。そんな時私は次のように考えて、平常心を取り戻すようにしています。

子供が健康でいるだけで感謝。重い病気にかかったり事故にあったりして、勉強や就職どころではない若者を考えれば、なんと健康のありがたいこと。

先の戦争では、敗戦が濃厚になってからの学徒動員だけでも2万人以上だったそうです。「生きて帰ってくることを期待せず」と訓示を受けて、戦場に散りました。手記として残す術を知らなかった農村の若者については、もっと詳細が不明なのだそうです。あの時代の母親に比べれば、私たちの今の不満など罰当たりです。

そして今日も、貧しく政情不安定にある国の若者たちのことを考えます。
健康でいてくれるだけで感謝、働く意欲と環境があるだけで感謝です。

息子さんの人生は息子さんのもの。息子さんは貴女の所有物ではありません。もっと息子さんを心から尊重し、信頼してあげてください。息子さんのこのたびの就職先も含めて、貴女はまだまだ恵まれていて、貴女を羨ましく思う人がゴマンといることをお忘れなく。

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ミセス・パンプキン 『最強の人生相談』『一流の育て方』著者

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立命館大学卒業。ビジネスパーソン向けの家庭問題・人間関係・人生相談の専門家として、東洋経済オンラインで2012年より執筆。最新刊は『最強の人生相談』(東洋経済新報社)。息子であり、『最強の働き方』(東洋経済新報社)の著者であるムーギー・キム氏との共著に、『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』(ダイヤモンド社)がある。ミセス・パンプキンへの相談は、こちらのメール、あるいは相談受付サイトで受け付けています。なお相談件数多数につき、過去に類似する相談があった場合には取り扱いません。ぜひ、これまでの連載をご参照ください。男性からのご相談も歓迎しております!

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