新常識!やせるには「カロリーの質」が大切だ 科学的根拠のある「ダイエット食」とは

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このように高カロリーであるナッツを食べても太らない(どちらかというとやせる傾向にある)ことは言うことができるが、ナッツを食べることでやせることができるかどうかは、まだ断定的なことは言えない。

その他、ほかの研究でも乳製品の摂取が体重増加につながっていることや、100%ジュースの摂取量が多い人ほど太っていることも明らかになっている。

炭水化物を減らした分、何を食べるか

同じ1g当たり4キロカロリーの炭水化物であっても、白米を食べていた人ほど太っており、玄米を食べていた人ほどやせていた。同じカロリーであっても、フルーツジュースを飲んでいた人ほど太っていたが、(加工していない)果物を食べていた人ほどやせていた。これらからも、摂取しているカロリーの「量」よりも、何からそのカロリーを摂取しているか、つまりカロリーの「質」のほうが重要なのだと理解してもらえると思う。

巷で流行っている糖質制限食の最大の問題点は、炭水化物を減らした分、代わりに何を食べるかに関して、しばしば間違った指導が行われているということである。「炭水化物さえ減らせばステーキでも焼肉でも好きな物を食べてもいい」とアドバイスされたならば、明らかにその食事療法は間違っているので、指導者を変えたほうがいいかもしれない。なぜならば、先ほど紹介した研究結果にもあったように、赤い肉を食べている人ほど体重が増えていることがわかっているからである。

さらには仮に肉を食べて体重を減らすことができたとしても、赤い肉をたくさん食べると、動脈硬化が進んで脳卒中になりやすくなったり、大腸がんのリスクを上げることになる。病気になってしまうリスクのある危険な食事なのである。病気のリスクを上げずにやせる方法があるのに、脳梗塞やがんになる可能性が高くなってまでやせたいと考える人は多くはないだろう。

白い炭水化物を減らして、その代わりに野菜や果物をたくさん食べるようにアドバイスされたならば、それは正しい食事療法である。白い炭水化物を、茶色い炭水化物に置き換えるように、というのも正しいダイエットの指導である。この「炭水化物の代わりに何を食べることが推奨されているか」に注目してみるだけで、あなたの受けている食事療法が正しいものなのか、科学的根拠のないあやしいものなのかチェックすることができる。

もう1つ重要なポイントは、やせるためには食事だけ変えるのでは不十分であるということである。数々の研究によって、食事だけでなく、運動量、睡眠、ストレスのレベルも体重に影響を与えていることが示唆されている。これらをすべて最適化することが、きちんとやせるための第一歩である。

ここで紹介している「やせる食事」は、実は、「健康的な食事」とかなり近い。つまり、「健康的な食事」は、脳卒中やがんなどを減らすだけでなく、ダイエットにも有効だと考えられる。

2003〜2004年には、アトキンスダイエットによって6カ月は体重減少がみられるものの、12カ月後には体重が元通りになってしまうことが2つのランダム化比較試験(2003年の論文2004年の論文)で明らかになった。それだけでなく、極端な炭水化物制限の健康に対する長期的な影響はまだわかっておらず、心臓病などのリスクが上がる可能性も疑われている

いずれにしても、単純に「炭水化物さえ食べなければ、ほかのものは何を食べてもいい」というダイエット法は、上記のような理由でおすすめできない。

津川 友介 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)准教授

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つがわ ゆうすけ / Yusuke Tsugawa

東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号(MPH)および博士号(PhD)を取得。聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。著書に『週刊ダイヤモンド』2017年「ベスト経済書」第1位に選ばれた『「原因と結果」の経済学』(中室牧子氏と共著、ダイヤモンド社)、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)。ブログ「医療政策学×医療経済学」で医療に関する最新情報を発信している。

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