こうして小規模マンションでも再生できた アトラス渋谷公園通りに見る、建て替え成功のヒント

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それでは、小規模マンションの建て替えがまったくの無理筋かというと、必ずしもそうではない。数少ない成功事例を参考にすれば、建て替え実現のヒントが見えてくる。

1坪430万円の高級マンションに再生

JR渋谷駅からNHK放送センター方面へ歩くこと5分、公園通りの坂の中腹に目的のマンションがある。現在、エントランスなど最後の仕上げ作業が進められているのが、旭化成不動産レジデンスが建て替えを手掛けた「アトラス渋谷公園通り」だ。

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「アトラス渋谷公園通り」のエントランス

地下1~地上3階までが店舗、4~13階が住宅である。住戸数は49(専有面積33~104平方メートル)。売りに出された住戸の平均坪単価は430万円。決して手軽に買える値段ではないが、実需に加えてセカンドハウスや投資用物件として買う客も多く、「かなりのペースで今年の夏に完売した」(旭化成不動産レジデンス・マンション建替え研究所の大木祐悟・主任研究員)。

この場所にはかつて、東京都住宅供給公社が1961年に建てた「宇田川町住宅」という7階建てのマンションがあった。4~7階に住宅16戸、地下1~地上3階には店舗が入っていた。全住戸が当時としては珍しいメゾネットタイプ。専有面積も58平方メートルと、都心でありながら一定程度の面積が確保されていた。

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老朽化していた「宇田川町住宅」

しかし、エレベーターが設置されていないなど、時代の経過とともに不便な点も目立ち始めた。建て替えの検討がスタートしたのは2003年のこと。

だが、この時は住民間で還元率(建て替え前の面積に対して建て替え後に持ち出し費用なしで取得できる面積の割合)の議論が平行線をたどり、検討作業はストップした。

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