安倍首相が直面する「健康不安」という爆弾 総裁選の勝利は確実だが…

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青木氏は故・竹下登首相の秘書から参議院議員に転じ、“参議院自民党のドン”といわれた。同じく“村上天皇”といわれて権勢を振るった村上正邦元参議院議員らとともに、2000年4月に密室で脳疾患に倒れた故・小渕恵三元首相の代わりに森喜郎首相を決めている。

青木氏は7月25日に秘書だった吉田博美参議院幹事長を呼び出し、参議院平成研は石破氏を支持するように伝えた。石破氏の地元は鳥取県で、一昨年の参議院選から青木氏の地元である島根県と合区になっている。ここを選挙区とするのが、青木氏の跡を取って参議院議員となった長男・青木一彦氏だ。

しかし一彦氏の選挙は一昨年に終わっており、次回の選挙は4年も後のこと。今わざわざ青木氏が石破氏に加担する必要はない。それでも石破氏に加担しようとするのは、今後の安倍首相の影響力をそぐことを狙ってのことだろう。そもそも自民党の中心は故・田中角栄元首相の流れをくみ、竹下首相や小渕首相を輩出した平成研究会のはずだったが、森首相以降は清和会に牛耳られたままだ。

青木氏は安倍首相よりも石破氏にシンパシー

その点、石破氏は平成研のDNAを保持している。もっとも一時は自民党を飛び出し、復党しても水月会を結成した。それでも青木氏にとって、石破氏のほうが安倍首相よりもシンパシーがある。何よりも強いのは、額賀派だった9年間に総裁候補を出せずに埋もれていた閉塞感を打破したいという気持ちだろう。青木氏は今年3月、額賀福四郎元財務相を会長の座から降ろし、「額賀派」から「竹下派」に“先祖返り”させている。

そのときに青木氏が動かしたのも参議院平成研の21人だった。そしてそのうちの1人は石破氏の水月会にも参加している中西哲参議院議員だ。

しかしながら衆議院では、安倍首相に近い茂木敏充経済財政政策担当相や山口泰明衆議院議員、加藤勝信厚労相はいち早く安倍支持を表明している。竹下亘会長は今週から来週にかけて派閥内でヒアリングを行い、8月8日の臨時役員会を経て翌9日に対応を発表する予定だが、「衆参で対応が分かれると、派閥の存在意義がなくなるのではないか」と危惧する声もある。

実際に竹下氏は7月31日に開かれた金田勝年衆議院議員のパーティで、「迷っていないといえばウソになる」と苦しい心中を吐露している。

一方で事実上の青木氏の支持を得た石破氏は、活動を活発化させている。7月31日にはともに1957年生まれの岸田政調会長、石原伸晃元幹事長、中谷元元防衛相と会食して2日前に誕生日を迎えた岸田氏を祝ったが、その内実は総裁選対策だ。

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