自治体ファイナンスに押し寄せる金融危機の荒波--欧州金融機関からの資金供給は実質凍結

欧米発の金融危機の影響が、地方自治体の資金調達にもじわじわと影響を及ぼしつつある。

東京都は10月、毎月中旬に行っていた10年債300億円の発行を見送った。また、北海道が10月10日に発行した5年債200億円の利回りは1.7%と異例の水準に急騰。国債比のスプレッドは約0.6%近くに広がり、発行利回りの上昇は資金調達コスト上昇となって北海道の財政に跳ね返っている。

地方自治体ではないが、10月から株式会社として新しいスタートを切った日本政策投資銀行も、10月17日に15年債300億円の政府保証債の発行延期を決めるなど、金融市場混乱の影響が公的セクターにも広がってきている。

地方自治体向けの長期ファイナンスを手掛ける外資系金融機関の動向も気になるところだ。資金調達先として民間資金の比重を高めつつある地方自治体にとって、長期資金を提供できる外資系金融機関の存在は重宝がられていたからだ。

「日本マーケットで外資系金融機関の流動性はなくなった。当社も円資金を取りにくくなっており、しばらく動けない状態」--そう語るのは、フランスとベルギーに本拠を置く自治体向け融資を手がける金融機関、デクシア・クレディ・ローカル銀行のロベール・ヴェルディエ東京支店長だ。

デクシアは、2006年11月に東京支店を開設。地方銀行などと共同で、京都市や山形県など、日本の地方自治体向けの長期融資を手がけてきた。08年6月末現在の残高は75件、1兆5000億円(地方債も含む)にのぼる。従来、自治体向け融資や地方債の引き受けは、地元の地方銀行が中心に担ってきたが、地銀は10年以上の(超)長期融資のリスクをとりにくく、デクシアのような外資系金融機関が特に長期の自治体向け資金調達において急速にその存在感を高めている。

幸い、自治体の資金調達が集中するのは2月から5月であるため、今秋の市場混乱の影響が直撃することはなかった。しかし、「来年になっても流動性が戻らないと、つらい見通しなることを心配している」(ヴェルディエ支店長)という。

デクシアに対し、フランス、ベルギー、ルクセンブルグの3カ国政府は9月末、64億ユーロの公的資金の注入を決めている。デクシアは米国において子会社FSAを通じてモノライン(金融保証)事業を展開しているほか、資金調達手段である欧州のカバードボンド(担保付き債券)市場が金融市場混乱の影響でほぼ機能停止している点が懸念された模様だ。

カバードボンドとは、不動産ローンや自治体向けローンなどを担保に発行される債券で、担保となる資産(カバープール)が発行体のバランスシートに残るのが特徴だ。この点、バランスシートから切り離されるABS(資産担保証券)とは異なる。日本の地方債もカバープールに入れることのできる資産として認められているため、デクシアのようなカバードボンド発行体にとっては、日本の地方債への需要は膨らむ傾向にあった。

しかし、足元の欧州のカバードボンド市場は「死んでいる状態」(ヴェルディエ支店長)。2009年度には回復する期待をかけているが、現状1兆5000万円の自治体向け融資・債券残高をこれ以上増やすには、「法律を制定して日本にカバードボンド市場をつくることが重要」(同)という。ただ、総選挙が近づく今の国会に、そうした立法は望めそうもない。

地方自治体の資金調達担当者にとっても、緊張を強いられる状態が続きそうだ。

以下、デクシア・クレディ・ローカル銀行東京支店のロベール・ヴェルディエ支店長に、金融危機や欧州の公的資金注入による今後の日本での事業展開への影響について聞いた。

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