がん発見がうっかり見過ごされる現場の実態 主治医に「大丈夫」と言われても油断できない

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これらを確認したうえで、筆者が顕微鏡を用いてサンプルの組織を詳細に観察すると、がんであることがわかった。だが、主治医の見立てでは「胃炎」となっていた。

このようなケースは、筆者の勤める病院では、主治医に直接、電話で連絡することにしている。主治医の見立てとは別に、がんと病理診断された場合には、患者に早急に電話連絡するといった対応も取られている。

内視鏡検査が終わった後に、主治医が患者に「うん、大丈夫そうですよ」などと言ってしまっているケースも想定され、安心した患者が病理診断の結果を聞きに来ないという可能性もある。

ただ、その場合も、チェック体制をきちんと整えている病院であれば、定期的に病理診断を主治医が確認する検討会などが開催されている。

患者側も「確認漏れ」に気をつけよう

しかし、スタッフが不足している医療機関では、そういったチェック体制が十分に機能していない可能性がある。また、病理医が不在で、病理診断を検査センターに外注している病院では、病理医からの注意喚起の連絡もないのがほとんどである。

このように、思いがけない悪性の診断というのは、どうしても医療の現場では起こりうる。もちろん、前述したように、確認漏れがないように連絡や確認の体制を整備し、医療スタッフ同士がしっかりとした連携を取る必要があることは言うまでもない。

しかし、そういった体制が100%機能しないことも不幸にして起こりうる。

次ページ想定外の事態を100%なくすことは不可能
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