「時代は"共育て"一択だ」と言い切れる理由 男の育児が世の中に与えるインパクトは何か

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これからは人生100年時代ですから、今20代の人たちは長い人生の中で仕事や職場を何度か変えることになるでしょう。つまり現在の会社も上司も、長い人生のうちの1ページに過ぎない

それに対し、家族は一生を通してずっと関わっていく存在ですから、人生における優先順位は会社とは比較になりません。上司にどう思われようと、家族の方が大事に決まってるじゃないですか。だったら上司の考えや職場の空気がどうであれ、男性も育児休暇を取ればいいんです。

「段取り力」「計画力」「実行力」を向上させる

――今のお話で、男性が育児をすることは家族や夫婦の関係に非常に良い影響を与えることが分かりました。男性本人にとっても、育児をするメリットはありますか。

駒崎:もちろんです。まず、育児は仕事の役に立ちます。僕も子どもができてからは以前より早い時間に退社していますが、時間に制約がある中で仕事の質を上げるには、高い段取り力や計画力、実行力が必要です。

独身の頃は、「仕事が終わらなくても残業すれば何とかなる」と考えてついダラダラしがちですが、働く時間に制限ができたことで、これらの能力がより研ぎ澄まされました。それに限られた時間で最大のパフォーマンスを発揮するには、知恵を使ってより高度な頭脳戦を繰り広げなくてはいけない。

その結果、仕事人としての自分が磨かれるし、成長できます。それは本人にとって大きなメリットではないでしょうか。

仕事への影響だけではありません。子どもという自分の命より大事な存在ができることは、人生において本当にすごい出来事だと思うんです。

それを体験できることは僕にとって本当に大きな喜びだし、父親になって本当によかったと感じています。僕が毎日帰宅してドアを開けるたび、子どもたちが「パパ~!」と言って胸に飛び込んできてくれる。こんなに嬉しいことはありません。

男の育休に「NO」を出す会社は見切りをつけていい

――育児によって男性社員の生産性や能力が向上するなら、会社や職場にとってもメリットは大きいはずですね。

駒崎:そうです。フローレンスの社員はほとんど残業をしませんが、時間内できちんと成果を出してくれるので、経営者である自分も何一つ文句はありません。定時で帰るのが当たり前の会社なので、「給与は下がっても働きやすい会社がいい」と言って、大企業から転職してきた社員もたくさんいます。

フローレンスの社員について話す駒崎氏(撮影:大室倫子)

だから、世の中はとっくにそういう流れなんですよ

政治家がいる永田町こそが、実は日本で最も後進的なんです。

もうすぐ元号が変わって平成も終わろうとしているのに、あそこだけがまだ昭和のまま。ビジネスの世界の方がよっぽど進化が速いのだから、あんな発言が飛び出す永田町は置いておいて、僕たちが暮らす社会が先に変わってしまえばいいんです。

もし自分の職場で男性が育児休暇を取得した前例がないなら、自分が前例になればいい。一つ前例ができれば、他の人たちも「なんだ、育休取っていいんだ」と思って、次々と後に続きますから。

もし上司が育児休暇の取得を認めてくれないなら、そんな上司の元からはとっとと去ればいい。部下がどんどん辞めていくような上司は、自然に淘汰されます。今は人手不足の時代ですから、わざわざ昭和な職場を選ばなくても、20代の若手なら働く場所はいくらでも見つかるはずです。

昔は会社が社員の面倒を一生見てくれたので、会社と社員は家族や仲間のようなメンバーシップ関係で結ばれていました。でも今は終身雇用制も崩壊し、会社が社員を守ってくれる時代ではなくなった。

なのに、社員が会社に忠誠を誓う必要があるんでしょうか。もちろん自分が働く会社への信頼やリスペクトは大事ですが、だからと言って会社の奴隷になる必要はありません。

だから20代の男性たちには、「空気なんて読むな、読むなら雇用契約書を読め」と言いたい(笑)。先ほども言った通り、育児休暇の取得は労働者に認められた正当な権利です。

もし会社がその権利を認めないなら、Twitterで「うちの会社は育休取らせてくれなかった!」と呟いてもいい。今は個人が声を挙げる手段はいくらでもあるし、個人が会社と戦える時代です。会社に対して遠慮や萎縮をして、自分の人生を無駄にする必要はない。若い人たちには、そう伝えたいですね。

(取材・文/塚田有香 撮影/大室倫子)

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『20's type』編集部

『20's type』は、キャリアデザインセンターが運営するWebマガジン。2018年4月より『営業type』からサイト名をリニューアル。新時代を生きる20代若手ビジネスパーソンの「働く力」を育むために役立つ情報を発信している。

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