7~9月個人消費は横ばい圏に

、試される持続力

10月29日、7─9月期の個人消費は前期比横ばいとなる可能性が高く、年初からの盛り上がりに減速感が加わっている。このまま個人消費が増加するのか、それとも失速するかは、株高・円安の持続性や賃上げ動向に大きく左右されそうだ。写真は4月、都内で撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 29日 ロイター] 7─9月期の個人消費は前期比横ばいとなる可能性が高く、年初からの盛り上がりに減速感が加わっている。

ただ、9月は東京五輪への期待や消費増税を見越した駆け込み需要もあり、持ち直しの動きが鮮明。このまま個人消費が増加するのか、それとも失速するかは、株高・円安の持続性や賃上げ動向に大きく左右されそうだ。

<9月消費持ち直し、オリンピック招致も一役>

29日に総務省が公表した9月家計調査では、全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の消費支出が実質で前年比3.7%増となり、市場予想の同0.5%増を大きく上回った。

同省によると、8月末が休日で支払いが9月にずれ込むなどの特殊要因が影響しているが、そうした要因を除いても同1.8%程度の増加になったとみられている。経済産業省が同日に発表した9月の商業販売統計速報でも小売業販売額(全店ベース)が同3.1%増と2カ月連続で増加した。

両統計では外食や旅行、自動車、衣料品など幅広い品目で需要の好転が見られ、消費者マインドの改善がうかがえる。

内閣府が公表した9月景気ウォッチャー調査での景気判断DI、消費動向調査における消費者態度指数(一般世帯)がそれぞれ上昇し、マインドの好転を裏付けている。

こうした9月のマインド改善の背景には、株価が回復傾向となったことに加え、9月7日の東京五輪の招致決定も影響したようだ。

BNPパリバ証券・シニアエコノミスト、加藤あずさ氏は、9月の消費改善について「五輪招致決定による消費者センチメントの改善に加え、一部に消費増税前の駆け込み需要があらわれた」と指摘する。

<消費一服感への懸念払拭も>

政策当局の中では、7─9月期の個人消費に対し、年前半までの好調さが夏場に入り停滞感を見せ、警戒する声も出ていた。

複数の当局者の間では「資産効果は円安・株高の進行が止まると、2、3四半期ではく落する」との声や「前年比では高額消費は伸びているが、前期比では停滞している」といった見方が出ていた。

加藤氏によると、7─9月の家計調査による実質消費水準指数は前期比0.5%減と低調となったもようだ。住居や自動車などを除いても同期は同0.3%減と試算しており、「GDPベースの個人消費は減速しそうである」とみている。

しかし、9月の小売関連統計が改善したことにより、「個人消費は足元で勢いを取り戻している可能性がある」(野村證券チーフエコノミスト・木下智夫氏)と、楽観的な見方が広がる気配となっている。背景には所得環境の改善がある。

29日に発表された労働力調査では、就業者数の増加などで9月完全失業率が4.0%に改善。9月新規求人倍率は1.50倍(季節調整値)に上昇した。家計調査においても勤労者世帯の実収入が、世帯主を中心に増加基調となっている。株高・円安の一服で持続性が心配された個人消費のエンジンが、雇用・所得環境の改善の影響を受けだした可能性がある。

<駆け込み需要は小規模に、所得改善がカギに>

先行きも雇用・所得環境の緩やかな改善が続くと見込まれ、来年4月の消費増税を前に、駆け込み需要はこれから本格化する。個人消費をけん引役とした内需主導の景気回復が、これから期待できる、というシナリオの大きなサポート要因として、この2つの要因が意識されている。

もっとも、今回の消費増税の駆け込み需要について、政府内では「1997年当時ほど大規模なものにはならない」との見方がある。住宅建設における増税後の補助金制度の存在や、自動車販売での車体課税の減税検討で、「あわてて購入しなくてもいい」という消費者心理を醸成しているからだ。

97年の消費増税時には、消費と住宅投資の駆け込み需要が前年の夏場に始まっていた。民間消費のピークは97年1─3月に迎え、前期比2.5%の大幅な伸びを記録。アベノミクスで消費が盛り上がった今年4─6月の0.7%を大きく上回る強さだった。

さらに住宅投資は96年1─3月から始まり、前期比5%を超える駆け込みが起こった。今回は「あれほどの大きな波は起こらない」(政府筋)と想定されている。

また、駆け込み後の反動減を主体とする消費失速を抑制するには、所得環境の改善が不可欠。現状は雇用環境に比べ、所得の改善が遅れている。

第一生命経済研究所・エコノミスト、大塚崇広氏は「実質可処分所得はこのところ弱い推移となっている。円安などを背景とした物価高が下押し要因。名目でみても、地方公務員給与削減の影響が出ている可能性もある」と指摘する。

その一方で、景気回復に伴って残業代やボーナスは増加し、「依然として低迷している基本給も労働需給の引き締まりなどにより、徐々に明るさが出てくる」(同)と期待される。所得環境改善が実現すれば、駆け込みに頼らない持続的な消費活動が実現する可能性がある。

(伊藤 純夫 中川 泉 編集;田巻 一彦)

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