企業にこそ「アート」を導入すべきだ コンサルタントとアーティストが手を組んだ!

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斎藤立(さいとう・りつ)マッキンゼー、米コロンビア大学MBA、投資ファンド(NY/東京)を経て、シグマクシスに参画。TEDスピーカー。CEO補佐を務めた後、現在、プリンシパル。戦略立案にとどまらず、現場を巻き込んだ企業変革を得意とし、アートを活用した新しい変革支援プログラムであるVision Forestの立ち上げなど、シグマクシス独自の価値創造に注力している。

斎藤:プロセスは違えども、企業変革を目指すという点で、志が近いと感じていました。絶対に成功してほしいと思っていたし、助けてあげたいとも思っていました。

ただ、ビジネスの世界にアートを活用するのは、前代未聞すぎて獣道だと感じてはいましたね。

――そんな「獣道」を行くビジネスで、実際に手を組むきっかけになったのは?

斎藤:今の自分が足りていない領域だとも感じたんですよ。美とか感性とか、知らなくちゃいけないな、と。それまで美術館に足を運ぶことも滅多にないぐらい、アートとはほぼ無縁だった。

実際に自分で描き続けてきた経験から、アートに足を踏み入れることで、人の感性を変えて企業の本質的な変革に貢献できるのでは、と感じ始めた。2008年ごろから一緒にやっていく準備が進み、09年から本格的に事業として協業することになりました。

長谷部:その頃、企業向けの経験値も、当初の何もわからないというレベルから、それなりに知識もついていし、組織の変革リーダーの口コミで、社員研修などでアートの導入も始めていました。

ただ、ボトムアップで入っていくと、どこかでストップしてしまう。経営者やリーダーに直接話すのは、全部、内部の担当社員に任せていて、当時はうちが直接、経営者層に話す立場にないと思っていたのです。なので、アート活用の魅力について内部の社員だけで経営者に説明するのは難しく、途中で止まってしまうことがしばしばありました。そうした問題について、斉藤さんと一緒に解決できるのでは、と思っていました。

実際に、企業内でのワークショップを行っていて痛感するのは、いかに普段、私たちが「表現」をせずに「言葉」と「数字」に頼って生きているのか、ということです。

アートだけではないのですが、人間として自己表現をするのは理屈抜きの自然な欲望だけど、企業がそれを見逃していて、その機会が完全に失われている。その必要性を感じられている企業が、われわれを必要としてくれているのだと思います。

斎藤:コンサルタントの仕事は数字と言葉が武器ですが、非常に共感しますね。アートを描くことで、表現の幅と深みが増し、限界を超えていく一助になると思っています。

(後編は11月6日に公開予定です)

(撮影:尾形 文繁)

張 子渓 ジャーナリスト
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