バブル、バブル、バブル 50万のヘッドフォン、20万のイヤホンも登場

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リーマンショック前のバブルはそういうことであるし、アルゴリズム取引などは前者の道だ。そして、不動産バブルも、金融商品や不動産についての素人である個人が、これまで金融市場に関係のなかった、経験の少ない投資家として入ってくることだ。ヘッドフォン、イヤフォンユーザーのように。

バブルの構造は、すべてのバブルで同じ

バブルの最大の特徴は、需要側も供給側も、新規参入者が派手に幅広く参入してくる。そして、伝統的プレーヤーよりも派手な動きをし、脚光を浴びる。そして、当初は実体があったのだが、実体に対する目利きをする人々の影は薄くなり、いなくなるか、あるいは、メディアを含め、彼らの声を聞かず、新しい目利きの声を聞くようになる。かつてのオーディオマニアと現在のヘッドフォンマニアでは聴く音楽も違うし、ブログでの文章の質も異なる。

だから、見れば、それがバブルであるかどうかは一目瞭然だ。しかし、利害関係者としては、警鐘を鳴らすインセンティブはない。ここで儲けておかなくては、将来が不安だからだ。ユーザーも興奮して幸せなのだから、警鐘を聞くインセンティブはない。

熱狂を覚ます有識者は、無粋で人々を不幸にするものとして、社会から排除され、メディアからも姿を消していく。だから、バブルはしばらく続く。そして、持続不可能なまでに価格が上がったところで、人々はもう買うことをやめる。ヘッドフォンもイヤホンも土地も証券化商品も株も。買い手がいなくなり、バブルは終わる。

金融バブルとヘッドフォンバブルの違いは、崩壊後、家にヘッドフォンが大量に残っているか、不良資産が銀行に残るかの違いだ。金融バブルでも個人を巻き込んだ場合は、資産での損失を労働所得で今後補うことによって、なんとか処理することになる。だから、個人を巻き込むバブルは持続するのだ。ただし、銀行が毀損、破綻すると、これは社会的に広がり、経済的な広がりが大きくなる。その結果、銀行を巻き込んだ金融バブルだけが、人々の記憶に残り、経済の教科書に残り続けるのだ。しかし、それ以外のバブルの構造は、すべてのバブルにおいて同じなのだ。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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