眼鏡、コンタクトは不要に!? 激安競争で急拡大する視力矯正「レーシック」手術

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 眼鏡、コンタクトレンズに代わる第三の視力矯正方法として、レーシックが注目を集めている。レーシックとは角膜の表面をめくり、エキシマレーザーを照射して角膜の屈折を矯正する手術のこと。健康保険の適用はないが、手術時間およそ10分で近視、乱視、遠視を治すことができるとされる。

「遠くの建物の中までよく見える。目の乾きや旅行時の煩わしさなど、コンタクトに付きまとう悩みもなくなった」。1年半前に手術を受けた30代の女性は満足げに語る。当初は不安もあったが、実際、友人や妹が視力を回復した姿を見て決意。両眼とも0・1以下だった視力は右1・5、左2・0まで回復した。

日本では2000年に厚生省(当時)がエキシマレーザーによる矯正手術を認可したことで導入が本格化。レーシックを中心とした屈折矯正手術市場は07年には年間約25万件まで拡大した。牽引したのが、視力矯正専門クリニックの激しい低価格競争だ。

それまで手術料金は両眼で40万円前後を下回ることはなかったが、04年末に美容系クリニックが両眼で30万円以下という低価格路線で参入。今では大手の3大クリニックは両眼で10万円台前半という価格で競争しており、最安値は9・8万円だ。低価格競争に巻き込まれ、05年、06年には同業の専門クリニックが相次いで撤退に追い込まれている。

大手専門クリニックのうち、こうした低価格競争と一線を画しているのが、両眼で35万円の神戸クリニックだ。「最新技術『アイレーシック』の導入、アフターケアの生涯保証など付加価値向上で差別化を図る」と吉田圭介理事長は語る。

名門眼科も最新機導入 ただ合併症のおそれ残る

アイレーシックはカスタムメードされたデータを基にレーザーを照射する、三つの医療技術が統合された最先端の術式。年間100万件超と先を行く米国では、国防総省が軍パイロットに、NASAが宇宙飛行士にアイレーシックを承認している。夜間視力の向上、手術時の合併症のリスク軽減に優れているとされる。

ただ、億円単位の導入コストが重く、日本で導入しているクリニックはまだ少数だ。そのうちの一つが、百年を超える歴史を持つ眼科総合病院の井上眼科病院。「あらゆる眼病に対応できる専門医がおり、何らかの異常が見つかったらすぐに対応できる体制が強み」と堀川良高レーシックセンター長は力を込める。同院では両眼36万円でアイレーシックを提供している。

アイレーシックの登場で、視力矯正手術は「老眼対応を除き、技術レベルは来るところまで来ている」(吉田理事長)とされるが、日本眼科医会の宇津見義一常任理事は「術後に網膜剥離や角膜混濁を生じ手術を行った例がある。また角膜が突出し、眼鏡では視力矯正ができない不正乱視の角膜拡張症となって、つねに特殊ハードコンタクトレンズの装用が必要となった例も報告されている」と語る。術後に手元の字も見えないほどの遠視になった例もある。「一度実施すると元に戻らないことを認識したうえで、手術は眼科専門医によって慎重に行われるべき」(宇津見常任理事)なのは間違いなさそうだ。

(週刊東洋経済)

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