岐路に立つ東芝、市況急落でフラッシュメモリ「三極体制」崩壊

岐路に立つ東芝、市況急落でフラッシュメモリ「三極体制」崩壊

10月22日、韓国サムスン電子による米サンディスク買収提案が撤回された。サンディスクの業績悪化と株価低迷で、提示額での買収は困難と判断したというのが表向きの理由だ。しかしその背景では、東芝がサンディスクとの共同設備の買い取りに合意するなど介入を進め、サムスン電子の牽制に動いていた。

知的財産を囲い込む日韓米三極体制

デジタルカメラ、携帯音楽端末、USBメモリなどのデータ記憶媒体として使われるNAND型フラッシュメモリ市場はこれまで、東芝、サムスン電子、サンディスクの3社による「日韓米三極体制」が囲い込む格好で成長してきた。サムスン電子の買収提案は、この安定的な枠組みの崩壊に向けた地殻変動が起こったことを意味する。

「選択と集中」を標榜する東芝は、NAND型フラッシュメモリと、原子力発電に経営資源を集中させ、「両コア事業とシナジーのない事業は切り離してきた」(西田厚聰社長)。そのコア事業で後戻りはできない。買収の阻止に動いたのはサンディスクとの関係強化に見えるが、むしろ三極体制崩壊後の新たな枠組みで戦っていかなければならないという意志の表れだ。

東芝は1987年にNAND型フラッシュメモリを発明し、91年に実用化した。だが「当時の東芝は、85年に量産に成功した1メガビットDRAMで世界首位に立った時期で、フラッシュメモリへは注力できなかった」(東芝の技術者として発明を担った舛岡富士雄・東北大学名誉教授)。そのため92年に「普及のために仕方なく」(当時の半導体事業幹部)、サムスン電子をセカンドベンダーに据えた。業界標準化に向け、サムスン電子に技術仕様や論理回路部分などの情報を提供したのだ。サムスン電子はこの頃、東芝にとってまさに「盟友」だった。

だが、やがてDRAMが海外勢に押され、NAND型フラッシュメモリに活路を求めるようになった東芝は、99年にコントローラー部分の技術に定評のあるサンディスクと手を組んだ。2002年には三重県・四日市工場で共同生産も開始し、以来サンディスクも「盟友」となる。

当時、東芝の半導体事業幹部は「東芝、サムスン電子、サンディスクの3社でNAND型フラッシュメモリの知的財産を囲い込み、外部へ出さないような知財戦略をとった」と話していた。実際、04年に仏伊合弁のSTマイクロエレクトロニクスと韓国のハイニックス半導体が、NAND型フラッシュメモリを共同開発した際には、サンディスクと東芝がそれぞれを特許侵害として提訴している。

その後、NAND型フラッシュメモリは需要が伸長、07年には推計で約1・4兆円市場にまで拡大した。その中で、サムスン電子は世界首位、東芝・サンディスク連合は世界2位。サンディスクは独自のコンパクトフラッシュなどフラッシュメモリを応用したカード製品でも世界首位の座を占め、三極体制は揺るがないかに見えた。

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