W杯の「サッカー・スパイク戦争」が熱すぎる 長友のオーバーラップを可能にする「あの靴」

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カンガルー皮を使うと、非常にしなやかになり、足と一体化するフィット感を実現しやすいのです。はじめ、あまり足に合ってなかったとしても、しだいに足なじみが良くなってきます。この抜群のフィット感が、昌子選手や遠藤選手が得意とする「ボールを止めて蹴る」という動きをしやすくしています。

先日、引き分けに持ち込んだ「日本×セネガル戦」で昌子選手が見せた守備の反応の速さも、この【ティエンポ】の貢献が大きいと思います。

腰裏(かかとの内側の部分)に人工皮革であるマイクロファイバーを採用しており、靴の中で足がずれない。足入れのカッティングが動きやすいローダウンになっていても、「走る」「ボールを止める」「蹴る」が非常にやりやすいのです。

ナイキは、創業者のフィル・ナイト氏が元・陸上競技の選手で、“アスリートのためのシューズ”という定評がありますが、サッカー・スパイクについても徹底的に考えつくされています。アスリート文化が生んだナイキの哲学を、スパイク一つひとつから感じ取ることができます。

グラウンドで選手の最後の味方になるのは、スパイク

グラウンドで選手の最後の味方になってくれるのは、スパイクだと思っています。先述の「ブラジル×コスタリカ」の試合でも、疲労が限界まできている最後の2分間、20m以上を走り込んだコウチーニョ選手の爆発的なスピードや、ネイマール選手の相手のDFとせめぎ合う中での一瞬をとらえたシュート力。最後の最後まで力を振り絞った選手に、こうして結果を出させるのが、最新テクノロジーと優れたインターフェースを盛り込んだスパイクなのだと思います。

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日本時間6月28日夜11時に始まる、日本の決勝トーナメント進出のかかったグループリーグ第3戦「日本×ポーランド」戦も、まさにナイキのスパイク同士の対決が見ものです。前述したように、日本のセンターバック・昌子選手はボールコントロールに優れた【ティエンポ】を履いていますが、日本から最も恐れられているポーランドのFWレヴァンドフスキ選手は、「点取り」に特化した【ハイパーヴェノム】を履いているのです。

レヴァンドフスキ選手は、怖いくらい完璧な万能型FW。どの場所からでも、ゴールさえ見えれば点を取れる選手で、しかもスピードがあってボールコントロールも巧み。さらにはゲームメークもできてフリーキックもうまい。無回転シュートも打てる。そういう選手が【ハイパーヴェノム】を履くと、どれだけ危険になるのか。このレヴァンドフスキ選手を、【ティエンポ】を履いた昌子選手がどう抑えるか、要注目です。

スパイクを知ってサッカーを観ると、めちゃくちゃ面白いんです。この人がこういう動きを、ああいうプレーをしたのって……と足元を見ていくと、「このスパイクか!」みたいなシーンがたくさんあります。スパイクの闘いと思ってW杯を見ると、また違った面白さに出合えると思います。

「世界に勝てるか勝てないかは、スパイクが決める」と言っては言い過ぎかもしれませんが、ぜひ皆さんも、選手の足元にも注目しながら、W杯を楽しんでみてください。

高橋 竜也 Futaba SOCCER WORLD副店長

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たかはし たつや / Tatsuya Takahashi

2012年、株式会社フタバスポーツ入社。Futaba SOCCER WORLD サッカースパイク担当。高校時代、インターハイで全国大会に出場。自身のサッカー経験から、主に中学生、高校生を中心としたサッカープレーヤーに対する、スパイク選びのアドバイスに従事。それぞれの選手の足型から、ポジション、プレースタイルをヒアリングし、最適なシューズ選びのサポートを実施している。Futaba SOCCER WORLDは、日本最大のサッカーショップ。店舗面積は約600坪。

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