トマトバブルはじけて、カゴメが足踏み 下期以降はナポリタンブームで巻き返しも

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新商品以外では、2012年後半に火が付いた「ナポリタンブーム」が注目材料だ。ナポリタンは、スパゲティをゆでた後にトマトケチャップやトマトソースとともに具材を炒めて調理する日本独特の人気メニュー。カゴメはナポリタン発祥の地・横浜で、11月2~4日に、全国の人気店のナポリタン16種類を集めて「ナポリタンスタジアム」を開催し、ナポリタン人気を後押しする。

次はナポリタンブームでケチャップ拡大狙う

そのナポリタンに欠かせないトマトケチャップもまた、カゴメの食品事業での定番中の定番商品だ。

スパゲティの人気メニューの中でも、ミートソースやアラビアータ、カルボナーラなどは、ゆでた麺に具材入りソースを掛ければ作れるため、レトルトパック入りなどの手軽な商品が出回っている。だが、ナポリタンでは麺をゆでた後にさらに炒めるという調理工程が必要なため、カゴメは自社で保有するナポリタンの“秘伝”の調理レシピを公開することで、ケチャップの需要を掘り起こしていく構えだ。

カゴメの推計によると、国内トマトケチャップ市場は今2013年で187億円と、トマトジュースの同220億円に匹敵する。カゴメはケチャップ市場でも断トツのシェアを占めており、ナポリタンブームがさらに盛り上がった場合の恩恵は意外に大きくなる可能性もありうる。

実は昨年のトマトブームは、キッコーマン傘下で同業の日本デルモンテと京都大学などの共同研究で火が着き、結果的に市場シェアトップのカゴメが最大のメリットを享受することができたというもの。今回のナポリタンブームで、カゴメは自ら、秘伝のレシピ公開やナポリタンスタジアム開催などに打って出ている。

今2013年度は雌伏を余儀なくされそうなカゴメの業績だが、来期以降ははたして回復に向かうのか。その成否は、ナポリタンブームの取り込みにも懸かっていそうだ。
 

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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