飲み過ぎ注意!薬の大量摂取は毒にもなる 72歳女性を回復させた超シンプルな治療法

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実際、Aさんが服用している薬の量は凄まじかった。

神経痛に有効とされている抗けいれん薬系の薬を最大量服用しているほかに、安定剤と睡眠薬としてベンゾジアゼピン系薬剤を3種類。さらには、筋弛緩薬を1種類、胃薬を2種類、下剤を2種類、ビタミン薬を2種類、神経痛に効くとされている漢方薬1種類。これでも終わらず、医療用麻薬であるモルヒネも毎日90mg服用していた。体重45キロの高齢者にとっては、とてつもない量である。

これらの薬は、新たに処方され飲み始めたときは多少有効な気がしたが、それ以降はあまり変化がなく、量が増やされていき、それに別の薬が加わり、副作用に対しても薬が処方され、現在の状態になったとのことであった。

Aさんとの困難な会話を繰り返しながら、夫とも相談して、まずは薬を減らして様子を見よう、ということになった。Aさんと夫があまり効いていないと感じている薬から、少しずつ減量し、中止していくこととした。

明らかな変化は初診3カ月で訪れた

抗けいれん薬、ベンゾジアゼピン系薬剤、医療用麻薬などは、急に中止すると「離脱症状」と呼ばれる激しい反応が起こることがある。そこで1種類ずつ、毎週10~20%程度ずつ減らしていった。これだけの種類だと、減薬の過程だけでも1年近くかかってしまう。

減薬期間中、何もしないのももったいないので、介護保険を申請して通所リハビリテーションを始めてもらった。何かあったらすぐに連絡するようにと指示し、毎月1回のペースで来院してもらった。

明らかな変化は初診3カ月位から現れ始めた。

Aさんの表情が戻ってきて、応答がしっかりし始めた。一日中ほぼ寝たきり状態だったのが、昼間は起きて通所リハビリで教わった運動などをしているという。

初診から1年後、ほとんどすべての薬剤を中止した頃には別人と見まがうほどになっていた。 外出の際はまだ車いすだが、家の中は自力で歩いているという。

Aさんは手術の合併症で苦しんでいたわけではなかったのだ。薬剤の副作用による認知障害を起こしていたのである。

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