シリコンバレーを襲う金融危機、レイオフ、ホームレスが急増


 サンフランシスコとサンノゼを結ぶ高速I−280を降りた信号の横。

「失業。仕事か、金を!(Laid off. Job or Money!)」と古紙を持った浮浪者がドライバーたちに向って、歩いてくる。信号が変ったので、ホッとして向ったダウンタウンには、ゾンビのような空虚な目をしたホームレスたちが並んで座っている。カリフォルニア州だけでなく全米でホームレスは増加中だ。

ホームレス化の波は中流階級のアメリカ人にまで及び、増加中だ。ヒューレットパッカード(HP)やヤフー、半導体チップメーカー・NVIDIAなどのハイテク関連や、航空会社での人員削減、カリフォルニア本社のデパート、マーヴィンの破産、靴の小売店シュー・パビリオンの全店閉店....。

会計士だったマリアも、新たにホームレスとなった一人。

「職を失った当初は、電気、ガスが止められたわ。ローンが払えなくなって、マイホームから追い出された」。彼女と建築工事現場で働く夫のフランシスコ、2人の子供たちは、取り敢えずステーションワゴンで暮らしている。「予算は月30万円までで、4寝室の物件を9月から探しているけど、まだ見つからない。」サブプライムローンの返済が滞り、住宅を差し押さえられた人たちが、こぞって賃貸物件を探しているからだ。結果、需要が供給を上回り、賃貸料が上昇中だ。ロサンジェルス近郊では、なんと家を追い出された債務者たちの一郡が、テントで集落を作り、暮らしているところさえできた。

一方、ソフト会社を経営するロイは「今回の景気後退は、ITバブルがはじけた2000年ころほどは悪くない」という。サンフランシスコ本社のオンライン広告の新興企業・アドブライト(AdBrite)のCEO、イッギー・フラノは「以前、経験したことで、死者が多々出るんだ」と米紙とのインタビューで答えている。アドブライトは同社の25%に当たる40人の従業員の首を切ることで乗り切り、決算上利益が出ていると投資家にアピールしていくという。同社はベンチャー・キャピタリストから3500万ドルの融資を受けている。

ベンチャー・キャピタリストたちは、株式公開前のスタートアップ企業に、経費節約と人員削減で不況を何とか持ちこたえるよう指導している。豪勢なランチや、シャンペンがふんだんに振りまわれたディナーなど、華やかだったシリコンバレーはもはや過去の夢。冬の時代を生き抜けという声が、あちこちの会議室から聞こえてくる。もちろん株式の新規公開などパッタリなくなった。それどころか、逆に、破産コンサルティングに乗り出す新興企業も出てきているほどだ。

中流階級も企業トップたちも、ここのところの株式急落に落胆。「ここ1カ月以内に60万ドルも資産価値が下落した。これでは到底リタイアできない」と、ある経営者は嘆く。また、この株式下落を見越して、原油商品相場に手を出した某ベンチャー・キャピタリストは、最近の原油価格急落で大損。「ヨットと自家用飛行機を売りに出さなきゃ。それでも家が残っていてよかった」と胸を撫で下ろす!?

不況の時こそ「富が形成される」という某投資家は、値が下がった優良株を買っている。それだけの体力、つまり莫大な金力があれば、暴落相場での投資も恐るるに足らないと豪語。要するに人と同じことをやっていてはお金は儲からないということなのだろうか。

しかし、強がりにも見える。著名投資家のカーク・カーコリアンや、サムナー・レッドストーンは手持ちの株式の一部を売却、新規出資の手も引いている。電子決済会社・ペイパルを創業して一躍リッチになり、高級電気自動車メーカーのテスラに投資して会長に収まったエロン・ムスクも、この金融危機で、テスラの工場閉鎖や人員削減、サンノゼ工場稼動の延期に迫られた。

これから本格的に突入する冬の時代を、米国はどう乗り切っていくのだろうか。危機はまだまだ幕を開けたばかりだ。
(Ayako Jacobsson =東洋経済オンライン)

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