なぜ長期金利は、大きく低下したのか 1993年は約4%あったのに、いまや1%割れ

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米金融緩和が終了すればリスクプレミアムが高まる

金融当局が金融緩和の継続を保証すれば、借り手のリスクプレミアムは低下する。したがって、長期金利が低下する(イールドカーブが平坦になる)のである。リーマンショック後に長期金利が低下した大きな原因は、ここに求められる。これは、異次元緩和措置が導入される前に、日本銀行が「時間軸効果」として強調していた点だ。この状況は米国でも同じである。

以上の認識が正しければ、成長率や物価上昇率が変わらなくとも、金融緩和が終われば(あるいは、終わると予測されれば)、前述のリスクプレミアムが変化して長期金利は上昇するだろう。したがって、短期金利はあまり変わらず、長期金利が上昇して、リーマンショック前の状態になるだろう。

10年国債の利回りで言えば、日本では、1~2%程度に上昇するだろう。米国では、4~5%程度になるだろう。今年5月に生じたのは、このプロセスの初めであったと解釈できる。3月中旬以降1%台にまで低下していた米国の利回りが5月初めから急上昇し、9月初めには3%近くになったのである(10月9日では、2.66%)。

米国経済はこのような金利上昇に耐えられるだろう。しかし、日本では問題だ。とくに、国債の利払いが増えることが問題だ。急には増えないが、かなり短期間のうちに増える。財政は大問題だ。

他方で、すでに述べたように金利は80年代までの状態には戻らない。だから、ストックとフローの齟齬の問題は続くわけだ。つまり、ハイリターンの必要性は続くのである。しかし、金融緩和が終わると投機資金の調達は難しくなる。このジレンマはどう解決されるだろうか。

週刊東洋経済2013年10月26日号

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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