エコノミスト「データジャーナリズム」の成果 課金ユーザーを誘引する専門チームの独自力

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ソーシャルメディア用のチャート作りには、微調整が欠かせない。エコノミスト誌が紙媒体/オンライン用に作成するチャートの約2割は、理解するまでに最長1分の滞在時間を要する。だが、ソーシャルメディアでそれはありえない。そこで、スクロールするだけで要点が掴めるよう、チャートを簡略化し、示すポイントをひとつに絞るよう工夫している。

また、チャートおよびインタラクティブグラフをデザインする際に、モバイル機器の画面を念頭に置く必要もある。マクドナルドの人気商品ビッグマック1個の価格を通じて各国の経済力を測る独自の指標「ビッグマック指数」も然りだ。同誌はこれを30年前から年2回発表しているが、現在、そのインタラクティブチャートのデザインをモバイル画面に合わせて見直しており、次のチャートを発表する今年7月の完成を予定している。読者1000人に対してアンケートを行ない、スクリーンショットやヒートマップを用い、どのようなデザインが好まれるのかを割り出したという。

さらに、読者およびデータジャーナリストファンをより多く取り込むための努力も怠らない。チャートのデザイン変更コンテストを独自に実施し、米国に上陸したハリケーンに関するチャートの新デザインを読者に呼びかけたところ、60人からさまざまな案が送られてきたと、セルビー=ブースロイド氏は言う。

エコノミスト誌が作成したハリケーン「アーマ(Irma)」の予想進路図(画像:「エコノミスト」より)

エコノミスト誌の方法論

間もなく発表されるビッグマック指数は、読者が生データをダウンロードできるものになるという。セガー氏はTwitterアカウントにおける同誌のチャートの活用にも積極的で、業界の人々とチャットしたり、エコノミスト誌の方法論を説いたりしている。データ一般の例に漏れず、人間の声を足すことで、作成したチャートをより身近に感じさせられるという。

セガー氏いわく、「出典元が明らかで、理路整然としたものであれば、読者は数字、統計、チャートを客観的裏付けと見なしてくれる」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)

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DIGIDAY[日本版]編集部

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