国内生保・大手9社トップインタビュー--業界再編の行方は?

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第一生命 斎藤勝利社長
生保以外とくっついてもシナジーが出せるとは思えません

 この数年間、団塊の世代が典型ですが、定年を迎える方がえて、死亡保障がだんだん少なくなっている。一方で、医療保険を中心に、介護、年金というのは確実に増えています。こうした変化の中で、消費者保護に対するお客様の目線もどんどん高くなってきています。そして、新しい商品開発の競争と同じくらいの大きなウエートで、品質競争が起こっていると考えています。

たとえば、「入り口」である加入時の説明能力、「中間」である契約後のさまざまな変更手続きや利便性、そして「出口」の支払いで、どうスピィーディに正確に対応できるか、お客様から信頼いただけるレベルという意味での「品質」競争で。

市場全体のニーズが変化し、プレーヤーは増え、競争も激化していますが、保険会社はバランスシートの問題だけでなく、「品質」も含めた競争についていけるかどうか、それが今後の生き残りの重要な要素であり、再編の引き金にもなると思います。

ただ生保は、ほかの金融機関に比べると、旧契約分も含めて何本もシステムを走らせざるをえないので、合併しても効率化メリットは大きくありません。また、生保のカルチャーは、ほかの金融機関のカルチャーと違いますから、海外の例をみても、金融コングロマリット化する方向より、生保事業にアセトマネジメント事業をプラスしたような形で終わっています。特に株式会社になると、資本効率が問われますからね。

再編という意味では、生保以外のところでのシナジーはきわめて難しいでしょう。同じことをやっているところと再編したほうが、無駄を省けるし、効率化を進めやすいと思います。要するに、商品も含めて、一方に片寄せできますから。違ったところと一緒になっても効率化はできません。

死亡保障については営業職員を徹底的に磨き上げ、効率化する。一方、変額年金などに加え、貯蓄的な商品を伸ばし、海外も含めた新規分野のウエーも高めていきたいと考えます。伝統的な分野があるからこそ、新規分野ができています。伝統的な分野で、さらにシェアを上げていきたいですね。

死亡保障というマーケットは約3兆円といわれていますが、それはお客様が店に買いに来るとか、インターネットで申し込むというものではなく、ニーズを喚起して、作り上げてきたマーケットです。そのニーズを喚起する最大の主体が営業職員です。自動車保険とかはネットになじみますが、米国をみても生保商品はフェース・ツー・フェースのチャネルが7割以上を占めています。私どもは十年来CS調査をやっいますが、営業職員が一定の頻度で訪問することが、お客様の満足度の高さにつながっており、それが信頼いただける行動でもあるわけです。

5年後、変額年金やアジアなど連結でみたとき、新しい分野が大きくなっていると思いますが、いままでやってきたことを、地道に徹底することが大切です。

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