我も我も、日本の造船会社がブラジルに殺到 川崎重工業、IHIに続き三菱重工も出資

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三菱重工はエコビック社との提携に際して、他の国内造船専業3社にも参画を呼びかけ、三菱商事を含む5社が出資者として名を連ねることになった。鯨井常務執行役員は、「当社には海洋の(総合的な)技術があり、今治さんら他の造船3社は(船体を)低コストで生産する技術に長けている。そうした各社の技術を組み合わせれば大きな強みになる」と連合形式のメリットを強調した。

現在、FPSOやドリルシップなどの建造は、現代重工やサムスン重工、大宇造船海洋など韓国造船大手が圧倒的なシェアを持つ。こうした韓国勢は、海洋資源分野の巨大な潜在需要を背後に持つブラジル造船業の成長性に目をつけ、新興の大手造船各社に自ら提携や経営参画を打診。しかし、主導権を握ろうとする韓国勢を嫌って、ブラジル側は最終的に日本企業をパートナーに選んだ。

今回の三菱重工らによる出資で、日本の造船大手とブラジル造船会社との主な組み合わせは出そろった。

ブラジルへの足場を確保、事業成功の課題は

改めて整理すると、川崎重工のパートナーは現地大手ゼネコン3社が設立したエスタレーロ・エンセアーダ・ド・パラグワス社、IHIグループは大手ゼネコン2社が設立したアトランチコスル社、そして今回の三菱重工連合とエコビック社の組み合わせとなる。

出資先の造船会社はいずれも現地企業が母体であるため、国営のペトロブラスから優先的に海洋開発・生産設備の受注を獲得しやすい立場にある。だが、いつまでたっても肝心の建造技術が伴わなければ、ペトロブラスによる海洋油田の開発・生産に支障を来し、同社から見限られてしまう。

現地造船会社への経営参画で、海洋資源分野で巨大な需要が期待されるブラジルに足場を確保した日本の造船大手。現地経営陣との信頼関係を深めつつ、技術・ノウハウをうまく移植し、出資先の造船所の技術・品質レベルを早期に上げられるかどうか。ブラジルでの事業成功には、こうした点が大きな課題となる。 

渡辺 清治 東洋経済 記者
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