格安ベンチャーも出現!激変する葬儀市場 市場規模1.7兆円、2040年には死亡者167万人時代へ

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ほかにも、会計士や中小企業診断士、ファイナンシャルプランナーなどが、虎視眈々と相続関連業務を狙っている。富裕層に顧客の多い大手信託銀行も、遺言信託や教育資金贈与信託によって、既存のメガバンクから、今後相続関連で広がるであろう中流層を取り込もうと必死なのだ。

豊作貧乏?の終活バブルはいつまで

もっとも「本丸」の葬儀を見ると、必ずしも儲かっているとは言いがたい。

日本の葬儀市場は年間1.7兆円とされる。しかし、10年版『現代葬儀白書』によると、葬儀費用総額(葬儀業者、寺、会葬者への支払費用。1都3県集計)の平均は、1993年の405万円をピークに、10年には242万円まで激減した。高齢化による会葬者の減少、デフレの進行、新興ベンチャーによる価格破壊などが、その原因だ。件数は増えども、葬式1回にかけるカネは減っているのが、現実である。

ネットを活用した葬儀ベンチャー、ユニクエスト・オンラインの「小さな火葬式」の場合、通夜・告別式なしの火葬のみで、17万3000円。ごく親しい関係者のみで、祭壇も飾らず、会葬者も呼ばない。通夜ぶるまいなどの料理なし、住職へのお布施もなしの、一律パックメニューだ。

「ホテルもテレビも驚くほど安いこの日本で、葬式の金額には違和感を感じる。葬式の棺の仕入れ価格は7000円、売価は7万円。インターネットが普及しても、この業界の暗部を照らしてはいない」と、田中智也社長は旧来の業界慣習を批判する。葬祭関連の上場企業は現在5社ほどあるが、営業利益率は10%以上といずれも水準が高い。裏返せば、今までが儲かり過ぎた、とも言える。

仕事にありつく人あり、儲けを失う人あり。とにかく熱い終活ビジネスだが、情報化でユーザーの視線も厳しくなる中、“お祭り”はいつまで続くのか。膨らむ一方の終活バブルに、一抹の不安を禁じえない。

 詳しくは『週刊東洋経済』10月26日号巻頭特集「いま知りたい 終活をぜひお読み下さい。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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