日本人が知らない中国深圳「爆速進化」の凄み 若者にとって深圳は夢のような起業の天国だ

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中国・深圳の賽格広場にある賽格電子市場(編集部撮影)

なぜかというと、日本だと、たとえ地方に逃げても言語が共通しているし、業界が割と狭いので、騙し合いの繰り返しが難しい。一方、中国は、隣の省でもまったく違うエコシステムなので、騙し取るコストが低い。まず自分で自分の身を守らないといけない。

もちろん、今だとインターネットの発達により、簡単に悪いことをしにくくなったが、中国人なら誰でも理解できるが、日本人にとってありえないカルチャーショックが今でも多いだろう。

若者最大の夢の天国

筆者は日中若者の価値観や消費を研究しており、もっとも感心したのは、両国の若者の「将来像」である。三菱総合研究所の定性調査で、日本人20代女性から「老後資金のため大好きな洋服を買うのをやめ、ユニクロやレンタルサービスで我慢し、貯金をきちんとしている」という声や、「将来の不安、やはり介護や資金ですね。年金どのぐらいもらえるかもわからないから、今のうちにふるさと納税や資産運用をしっかりしたほうがいい」など、将来に希望を持たずに防御しようとするホンネをよく聞く。

逆に同年代の中国人女性に聞くと、「老後」「年金」という言葉をまったく聞いたことがない。「不動産価格はまた上がっているから、今もう一軒買わないとますます買えなくなる」「空気が心配だから移民(移住)を考えている」「もっとおカネを稼がないと、子どもが良い教育をさせられない」など、不安はあるが積極的な行動を行う姿勢が見られる。それは、おそらく、今中国の若者は、所得が確実に向上しているし、経済・社会の発展も見えているため、明日はきっと今日より良い、というふうに希望を持って生きていると思う。

深圳に来た若者は、まさに巨大な「希望」を持っているグループだ。

深圳に行くと、世界中でも屈指の通信機器メーカーであるHUAWEIがある。そこで認めてもらえば、日本人からみても高年収を手に入れ、家族の将来が保障できる。また、貧乏学生から始まったベンチャーが市場ニーズに合って成功し、うまくBAT(百度、アリババ、テンセントの中国3大インターネット企業のこと)に買収され、一瞬で大富豪になる「神話」もあふれている。

深圳にあるテンセントの本社(筆者撮影)

何より、深圳で夢を追い、失敗してもすぐ新しいアイデアに向ければいいという、失敗は当然だが、いつかきっと成功できるという一回の挫折では止まらない精神を育んでいる。

つまり、ここに来られれば、何かを捕まえられそう。自分のアイデアに自信があれば、支えてくれる人がいて、実現できる環境もある。今はダメだったとしても、明日は新しい機会が待っている。

頑張れば奇跡を起こせるという「信仰」がある。

これだけそろえば、起業したい、世の中を動かしたい若者にとって、これ以上わくわくできる場所はあまりないだろう。

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