健康を脅かす「不眠症」への超シンプルな対処法 不眠症は「眠れない病気」ではない

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「床についてから何時間も寝つけなかった」という訴えをよく聞くが、そもそもそれが事実ではないことも多いという。

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「いくら寝つけないといっても、ずっと時計を睨んでいるはずはありませんよね。ベッドに入ってしばらくたち、ふと時計を見たら何時間もたっていた。しかし実際には、その間のどこかで寝落ちしている時間帯があるものです」

さらに三島氏はこう続ける。

「実際に脳波を測定しながら不眠症の人に寝てもらい、翌日に寝つきにかかった時間や睡眠時間を聞くと、自分で感じている睡眠時間と脳波測定の結果が2、3時間ずれていることも稀ではありません。このような状態を専門用語で『睡眠状態誤認』と呼びます

「眠れないのではないか」と思うから眠れなくなる

実際には眠れていないわけではないが、本人は「眠れていない」と感じている。そして、ひとたび「眠れない」と気に病んでしまうと、「今日も眠れないのではないか」という強迫観念が生じる。そして、ベッドに入ると緊張する「ベッド恐怖症」のようになって、本当に眠れなくなってしまうという。

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「こうして起こる不眠症状による日中の体調不良が、週に3日以上ある状態が3カ月以上続いた場合には、治療が必要な慢性不眠症と診断されるというのが、現在最もよく使われている基準です」

つまり不眠症は、個々が感じている『苦痛の度合い』で診断されるものである。発症の原因はストレスや病気などさまざまだが、いったん発症すると、不眠恐怖から慢性化するという心理的プロセスをもつ睡眠障害といえるのだ。比較的、神経質な人に起こりやすく、うつ病との関連性が高いのも、そのためなのである。

不眠症を招きやすい性格や感じ方を、不眠症予防のためといって自分で変えることは、なかなかできない。それでも、「睡眠不足に関しては、心がけ次第で十分、対策の余地がある」という。

不眠が深刻化して病気リスクを招かないためにも、くれぐれも日頃の睡眠の取り方に気をつけたいものである。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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