外国人急増の高速道路に迫られる円滑な対応 安全対策を講じないと事故のリスクが高まる

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高速道路の分岐を示すドイツの標識。すべてナンバリングの表示がある(筆者撮影)

私は年に何回か海外でもレンタカーを利用するが、外国で運転する際にあったらよいと思う、あるいはすでにあるので助かっているのは、1)、3)、6)である。高速道路のナンバリングは、すでに欧州では完全に定着しており、万国ほぼ共通のアルファベットとアラビア数字による表記は安心できる。

カーナビについては、ヨーロッパなどでは、日本のレンタカーと違い、ナビシステムは車載型ではなく、オプションでフロントガラスに張り付けるタイプが多いが、画面に表示される地図の言語と案内の音声がともに選択できることが多く、表示は現地語、音声は英語に設定しておくと標識の地名表示とも照らし合わせながら耳で英語を聴けるので一番良い。

2)のような外国人用の高速道路のパスは使っていないが、概して海外では高速道路の通行料は無料(イギリス、ドイツなど)か有料であっても日本に比べてかなり安いので、パスがなくても割高感を感じることは少ない。海外の高速道路の最近の事情については、次回以降にまとめて触れたいと思う。

高速道路の“共生”時代

道路でハンドルを握るという行為は、プロの運転士にすべてをゆだねる鉄道とは違い、個人の技能や経験、慣れといったことが安全に大きく影響するので、外国人を高速道路に誘致するだけで安全対策を講じておかなければ、事故のリスクを高めることにつながる。実際、高速道路での外国人による事故件数は、運転者の増加に比例して当然のことながら増えている。

ドイツで借りたレンタカーのカーナビ。説明部分は英語で地図表示は現地語(ドイツ語)(筆者撮影)

ただ、知らない国で運転するからリスクが高まるかというと必ずしもそうは言い切れない。私はこれまでに30あまりの国で5万キロメートル以上自分の運転で走破しているが、幸い事故は起こしていない。たぶん、日本にいるとき以上に緊張して慎重に運転することで、事故の危険性を回避しているのではないかと感じる。

もちろん、ゆったりした道路構造など施設のハード面と、渋滞の少なさ、大きくわかりやすい標識の設置などのソフト面の両面で、海外、特にヨーロッパ諸国のほうが運転しやすいこともその理由の一端かもしれない。であれば、まだまだ漢字だけの道路標識や日本語だけの表示板は、せめてアルファベットでの読みは併記するよう改めていかなければならないだろうし、それは観光客だけでなく、日本に移り住んだ外国人にも一定のプラスになるに違いない。

現在、鉄道では多くの会社や路線で英語のアナウンスが常識になってきているし、名古屋、京都、福岡などの市営地下鉄ではすでに英語に加えて韓国・朝鮮語や中国語のアナウンスを定着させている(名古屋市営地下鉄は一部ポルトガル語の案内も行っている)ことを考えると、高速道路の対応は少々遅れ気味と言えるかもしれない。

ただし、高速で運転しながら短時間で判別しなければならない高速道路の標識を数カ国語で標記すれば見にくくなってしまう。ユニバーサルサービスと安全性のはざまで、多国籍のドライバーが行き交う高速道路のあり方をどのように考えるか、日本ではこれまでに経験のないことだけに、多面的な視点による検討を重ねて前進させていくしかなさそうだ。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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