貧困層をより貧しくする日本の歪んだ所得再配分

それだけではない。日本では、驚くべきことに、ただでさえ苦しい立場にある独り親世帯(母子世帯・父子世帯)の貧困率が、政府の所得移転によって、かえって上昇するのだ。こんな問題を抱えているのは先進国の中でも日本だけである。なぜこんなことが起きるのか。


 その理由は、国民年金や国民健康保険の逆進性が高いことにある。所得移転には、年金給付や生活保護、児童手当などプラスの移転もあれば、社会保険料や消費税のようにマイナスの移転もあるが、日本では生活保護の補足率が低いため、最低生活水準の年収であっても、社会保険料や税を負担しているケースが多い。独り親世帯に限らずとも、日本における所得再配分の貧困削減効果は、欧州先進国に比べかなり低い。

こうした日本の歪んだ所得移転を是正するには、「給付付き税額控除」と呼ばれる政策が一つのヒントになるだろう。課税所得がなく、税金控除の恩恵を受けられない人に給付を行うことで、所得再配分を強化する仕組みだ。日本ではまだ聞き慣れない政策だが、米国や英国、カナダ、オランダなどでは、すでに導入が進んでいる。(下の図表)日本でも、中央大学法科大学院の森信茂樹教授を中心とする研究者グループが、子育て世帯を対象にした「給付付き児童税額控除」を提言。財源や税収が中立であっても効果をもたらす、とのシミュレーション結果を得ている。

貧困問題に対応するには、税制にまで踏み込んだ改革も避けて通れないようだ。


(週刊東洋経済)

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