なぜ、世界でバブルが何度も起きるのか 高リスクの投資が行われる背景にあるものとは?

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バブルの破綻と拡散の連鎖

00年代の米国では、住宅価格がバブルを起こした。サブプライムローンによって、低所得者層が住宅を購入できるようになったため、住宅に対する需要が増加した。供給面では、MBSやCDOが高利回りの投資機会を作り出したため、大量の資金が住宅市場に流れ込んだ。

しかし、バブルは実態から離れたもので、期待で支えられている部分が大きい。したがって永続せずに破綻する。米国の住宅価格・金融バブルは、07年頃に破綻した。

バブルが破綻すると、投機資金は他の対象に移る。米国の証券化商品から逃げた資金は、当初、原油や農産物などの商品市場に流れ込んで、これらの価格を急騰させた。そして、結局は、ユーロ圏と新興国に流れ込んだ。

ユーロに流入した資金は、バブルを引き起こした。スペイン、東欧諸国で住宅価格が急上昇した(ユーロ圏ではないが、英国の住宅価格も急上昇した)。バブルは住宅や不動産の価格で生じる場合が多いのだが、ユーロ圏でそれが典型的な形で生じたことになる。また、ギリシャをはじめとする南欧諸国の国債は、もともとリスキーなものが多かったが、そこにも流れ込んで国債バブルを引き起こした。

バブルは、乗るだけでなく、うまく降りることが重要だ。投資原資は短期で借りているので、価格が下落すると担保条件を満たせなくなる。そのため売却せざるをえなくなり、価格が急落する。しかし、売り抜ければ利益が得られる。

ユーロ圏から安全を求めて逃げ出した資金は、日米独の国債に流れ込み、バブルを起こした。

昨年秋以降の急激な円安と株高も、投機によって促進された可能性が強い。欧米のファンドは、これによって高い収益率を上げたはずだ。

ハイリターン投資には金融緩和が不可欠なので、緩和が終了すれば、条件は大きく変わる。しかし、ストックとフローの乖離があるかぎり、投機は簡単にはなくならない。金融緩和継続への圧力があるかぎり、金融緩和からの脱却は難しい。

ただし、長期金利が上昇すれば、投機の必要性は減るかもしれない。最初に述べたように、長期金利が低下したことがそもそもの問題の発端だからだ。もし金融緩和が終了すれば、15年近く続いた投機の時代は終わるのかもしれない。

週刊東洋経済2013年10月19日号

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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