鉄鋼値上げに大逆風、牽引役の中国市場も失速し、需要急減


 「新日鉄はKY(空気が読めない)だ」。ある鉄鋼商社幹部は、困惑気味に語る。

9月に入り、新日本製鉄は薄鋼板の追加値上げを発表した。需給のタイト感に加え、国内販価は海外市況に比べて割安。さらに豪州産鉄鉱石の値上がり幅は当初の想定より拡大している。こうした事情を受けて、11月出荷分から店売り(一般流通向け)価格を1トン当たり5000円引き上げる。

この判断が「KY」と呼ばれるゆえんだ。鉄鋼周辺の需要環境は、日ごとに悪化の一途をたどっている。昨年6月の建築基準法改正以降、需要低迷が続く建材のみならず、これまで逼迫していた製造業向けも急速に冷え込んでいる。

象徴的なのが自動車(四輪車)市場だ。8月の国内生産台数は、7月の108万台から77万台まで激減。トヨタ自動車は7月末に今年の世界販売計画を当初の985万台から950万台に改めたが、世界経済の減速から再度の下方修正は免れそうにない。

このため需給が極めてタイトだった自動車鋼板も、急激に荷動きが鈍くなっているという。前出の商社幹部は、「完成車メーカーの要請で在庫確保に走っていた下請けが、8月にいきなり発注をストップされ、流通は玉突き渋滞を起こしている」と現状を明かす。

4年分の豊富な受注残を抱え、各種鋼材の中で最も引き合いが強いといわれた造船向けさえも変調を来している。「韓国・中国向け中心に、発注保留が起きるかもしれないとの憶測が流れ始めた」と別の鉄鋼商社幹部はささやく。

需要は減退局面へ突入 一部電炉は値下げ実施

地合いの悪化は鉄鋼指標にも表れ始めている。

今月10日、日本鉄鋼連盟が公表した8月の普通鋼鋼材受注は、前月比10・3%(72万トン)減の626万トン。前年同月比では2年4カ月ぶりの減少に転じ、単月受注量としては2006年2月(612万トン)以来の低水準となった。

一方で、8月の鋼板類の在庫指標(薄板三品在庫)は、適正水準の400万トンを上回る前月比5・4%増(22万トン)の429万トンまで増加している。8月は例年、需要側の夏期減産の影響で在庫が増える傾向にある。それでも「単月で20万トンも増えるのは異例」(業界関係者)。鋼材の荷動きが急激に鈍くなっていることが見て取れる。

需要が減退局面に入ったことで、一部で鋼材値下げの動きも出始めている。電炉メーカー最大手の東京製鉄は、9月販売分から2カ月連続で薄鋼板の値下げを実施した。電炉原料である鉄スクラップが下落しているためだ。

2008年初に4万円台だったスクラップ価格は、7月に7万2000円の史上最高値まで急騰した。しかし足元は2万円台前半まで急落しており、電炉メーカーには値下げ余地が生まれている。「国内在庫はたまり、海外市況も下げ傾向。原料スクラップの値下がりを反映させた」(東鉄の阪部英二常務)。

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