韓国が期待する「北朝鮮ビジネス」の皮算用 南北経済協力の推進は経済浮揚につながるか

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インフラ関連市場が開かれると、韓国経済に与える波及効果も大きい。2014年に韓国金融委員会は「朝鮮半島統一と金融の役割・政策課題」において、「鉄道で773億ドル、道路374億ドル、電力104億ドル、通信96億ドル、空港30億ドル、港湾15億ドルが必要」と推定している。

KDB産業銀行が作成した報告書でも「今後10年間、北朝鮮の経済特区開発やエネルギー・交通・住宅などのインフラ投資規模が270兆ウォン(約27兆円)に達する」と見ている。

道路などインフラ投資規模は27兆円

さらに、北朝鮮北部・新義州と開城を結ぶ鉄道工事など、南北間の鉄道連結事業や韓国・日本海側と北朝鮮の羅津(ラジン)・先峰(ソンボン)経済貿易地帯、中国の東北三省、内蒙古などを結ぶ広域図們江開発事業が現実化する可能性も高まるという予測だ。

ユーラシア大陸へとつながる東海(トンヘ)線(日本海側を走る鉄道)の南側断絶区間(江陵~猪津=カンヌン~チェジン間110キロメートル)の連結事業が始まる可能性もある。南北は2007年4月に東海線の非武装地帯(DMZ)区間内の線路連結を終え、試験運転まで始めたが、今は中断されている。

関連機関はすでに具体的な準備作業に入っている。韓国・国土交通省は3月27日、国会で行われた「東海線鉄道復元討論会」で、「大統領直属機関の北方経済協力委員会とともに、シベリア鉄道利用活性化方案という研究領域の契約を目前にしている」と述べた。韓国鉄道公社も今年3月に社長直属の南北大陸事業処を新設し、韓国鉄道施設公団も南側鉄道の連結事業を準備している。

しかし、開城工業団地の再稼働や金剛山観光の再開が実現すれば、北朝鮮の核廃棄を前提に国連による経済制裁の解除はもちろん、韓国政府の大規模投資が先行されるだろう。

KDB産業銀行も、「北朝鮮との経済協力やインフラ投資のために、現在の南北協力基金に替わる大規模開発基金の設置が必要となる」と指摘するなど、資金調達が今後の宿題となりそうだ。国連安保理による制裁が経済協力の再開にとってネックとなっているのは変わりがない。

国連は2017年8月、北朝鮮との合作事業の新設・拡大を禁止する制裁案を決議した。また同年9月と12月には、北朝鮮への石油類の輸出を制限し、北朝鮮人労働者のビザ更新も禁止した。専門家らは「政治的変動による不確実性が存在すれば、利潤を追求する企業からすれば北朝鮮に対する積極的な投資は難しい。

究極的に企業が安定的に南北経済協力を推進できる環境作りが最も必要だ」と口をそろえる。

ファン・ジョンイル 韓国『中央日報エコノミスト』記者
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