法人減税への条件闘争、8%後に残る火種 財政再建よりも景気刺激に力点。党内で反発も

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賃金アップと言うけれど

最大の焦点になるのが法人税減税をめぐる推進派と慎重派の攻防だ。政府・与党の間で調整が難航したのは、「復興特別法人税の1年前倒し廃止」と「法人実効税率の引き下げ」である。

復興特別法人税については、「12月中に結論を得る」ことが決まり、廃止は半ば既定路線。争点はそのための条件をどう整えるかに移っている。

ネックになっているのが賃金をめぐる条件だ。復興特別法人税を廃止するための条件について、閣議決定文書は「確実に賃金上昇につなげられる方策と見通しを確認すること」と定めている。だが、賃金はあくまで民間企業が決めるもの。政労使の協議や経済産業省の監視によってプレッシャーをかけるだけで、廃止される特別法人税分が本当に賃金アップの原資になるのか疑わしい。

麻生財務相は「この国は全体主義でも軍国主義でもない。自由主義体制を取っており、企業の賃金決定に政府が介入する権限はない」と、民間の意思を尊重する。

一方、甘利明経済再生担当相は少し違う。「背中を押すことはできるし、実際にそういう行動を取ったかの検証もできる。経産省などを通じて、われわれの要請に応えていただいたかどうかの経緯については、適切な方法で把握し、公表できるのではないか」と政府が監視の目を光らせることをにじませる。

両大臣の発言からもわかるように、条件面では財務省、経産省の間にまだ溝があるようだ。「12月中の結論」に向けては、経済団体や労働組合の反応も含めてつばぜり合いが再燃するのはほぼ間違いない。

さらに厄介な問題が、法人実効税率の引き下げだ。

安倍首相は消費増税の決断を表明すると同時に、「法人税について真剣に検討を進めねばならない」と明言。恒久減税となる実効税率の引き下げには慎重だった自民・公明両党の税制調査会も、首相の強い意向に沿う形で、与党税制改正大綱に「速やかに検討を開始する」との記述を盛り込まざるをえなかった。

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