消費低迷で加速、強者も巻き込む百貨店再々編

消費低迷で加速、強者も巻き込む百貨店再々編

資本業務提携のうえ、3年以内をメドに経営統合することで合意した百貨店3位の高島屋と同5位のエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)。両社は来年2月末に株式を市場から調達、互いに10%ずつ持ち合う。

統合が実現すれば、新グループの規模は売上高約1・5兆円、営業利益約550億円(2007年度両社業績の単純合算)。売上高では最大手の三越伊勢丹ホールディングスとほぼ肩を並べ、営業利益では業界首位に立つ。

統合会見の席上、両首脳は互いの魅力を強調した。「H2Oは大阪を中心とした巨大商圏を持ち、紳士服や食料品分野に強い」(高島屋・鈴木弘治社長)。「高島屋は主要都市に基幹店を配置し、歴史と伝統もある。グループでの商業施設開発も魅力」(H2O・椙岡(すぎおか)俊一会長)。他社の増床で競争が一層激化する大阪地区での優位を不動のものとし、福岡など激戦地での勝負に打ち勝つ体力を持つ--両社の狙いは合致した。

業界初の「強者連合」

07年9月に、大丸と松坂屋ホールディングスの統合で誕生したJ.フロントリテイリングと、今年4月に三越と伊勢丹の統合で誕生した三越伊勢丹ホールディングス。見かけ上は対等な統合だったが、実はいずれも「勝ち組」が不振にあえぐ弱者を「救済」する形で進展したものにすぎない。統合前、大丸と伊勢丹は営業利益率4%台で、松坂屋ホールディングス、三越はそれぞれ2%、1%にまで落ち込んでいた。

一方、今回の2社連合はやや趣が異なる。高島屋は商業施設開発子会社の下支えもあり売上高は1兆円を超える。07年10月に阪急百貨店と阪神百貨店が統合して誕生したH2Oも大阪地区では圧倒的な存在感を誇る。両社とも営業利益率は3%台とそこそこ順調。再編の動きとは一線を画し、それぞれ単独路線を貫くかのように見えた。

だが、順調だったこの2社までも、統合という選択肢を採らざるをえないほど、百貨店業界の先行きは不透明感を増している。「現在の中期計画が終了する14年度以降の成長戦略が描けずにいた」(H2Oの椙岡会長)。話のきっかけは、両社の経営企画スタッフの情報交換だという。行き詰まりを感じた戦略立案の現場で上がった「次の一手」というわけだ。

業界を取り巻く環境は急激に悪化している。10月に出そろった主要百貨店の中間決算は、軒並み2ケタ減益。長引く衣料品の不振に加え、株安による逆資産効果で百貨店の上得意客である富裕層の消費も落ち込むばかり。下期以降はさらに厳しくなるとの見方が強い。「消費者は1年で激変した。じっくり時間をかけ必要なものだけを選ぶ購買行動に変わってしまった。この流れは元に戻らない」(J.フロントリテイリングの奥田務社長)。

J.フロント、三越伊勢丹とも、J.フロントが松坂屋改革で一定の成果を上げつつあるとはいえ、目に見える統合効果はまだ出ていない。このまま売り上げ低迷が続けば、間接費用の圧縮や不採算店閉鎖などの合理化だけでは不十分。高コスト体質といわれる百貨店の事業モデル自体を転換しなければ生き残りはない。「百貨店はリスクをとるのに臆病だったが、今はリスクをとるビジネス構造になる転換点。そのためにも規模が必要」(椙岡会長)。

今回の提携で百貨店の再編が終了したと見る向きは皆無。全国百貨店の売上高は、1991年の9兆7131億円をピークに、07年の7兆7052億円まで、実に11年連続のマイナス成長が続いている。疲弊する地方店でも閉鎖が相次ぐ。生き残るためのいや応のない「再々編劇」が始まろうとしている。

(福井 純、堀越千代 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

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