戦略特区で法人税20%、狙いは海外からの投資 対日投資倍増へ動き出した政府

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日本市場の潜在的魅力

だが、少子高齢化が進み、市場規模がピークアウトしつつある日本に、敢えて進出するメリットが果たして海外企業にあるのか──。

この疑問には、1)アジアの統括拠点としての立地、2)高い技術力を持つ日本で研究開発拠点を構えるメリット、3)最先端商品の先行市場としての日本──という利点が欧米企業に意識されていると政府関係筋の1人は、ロイターの取材に答えた。

同関係筋によると、欧米企業がアジアで事業展開する際には、司令塔的な機能を果たす統括本部をITインフラなどが整備されている日本に置くメリットがあるという。

また、研究開発拠点では、技術水準の高い日本企業や日本の大学と共同研究することを目的に、医療・医薬分野やその他の先端技術分野が注目されている。直近の例では、仏のヘリコプターメーカー「ユーロコプター」が神戸市に研究機関を設立。大震災以降、防災対策で高まる特殊ミッションヘリコプターの需要に対応した開発を手がけている。

最先端商品における先行市場としては、ナイキ、ギャップは、日本市場で売れれば世界で売れる、との戦略で日本に早くから進出。ギャップは米国以外で世界最大店舗数を展開している。IKEAは当初事務所だけ開設したが、現在は数千人規模の雇用効果をもたらしている。

国家戦略特区で新興国並み税率に

こうした点を意識しつつ、対日投資を呼び込むための最大の目玉となるのは「国家戦略特区」での様々な優遇措置だ。政府は具体的な規制緩和策を地方自治体などから募集しているが、その中で「法人実効税率を20%以下とする」ことを盛り込んだ東京都と大阪府の提案が有望視されている。

東京都は「東京オリンピック誘致の成功もあり、外国企業誘致のチャンス」(総合特区推進部)と、環境整備を始めている。大阪では「北大阪地区に国際拠点のある先端医療分野での誘致に力を入れる。世界的にみても高水準の研究レベルの拠点が複数あり、競争力はあるはず」(特区立地推進課)と見ている。

日本貿易振興機構(JETRO)の前田茂樹・対日投資部長は「対日投資促進活動をする上で、特区には大いに期待している」という。

ただ、法人税以外にも「物価の高さ、煩雑な手続きとその費用、生活環境など、すぐに解決が難しい問題もある」と指摘する。

特区ではこうした障害を低くして、外国企業が事業を起こしやすい環境を整える。9月に締め切られた募集では、地方公共団体や民間からすでに242件の応募があり、先攻中だ。

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