30代共働き夫婦が悩む2人目の子ども問題 1人目は勢いでも「次」は「複雑な事情」が絡む

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「私も本当は子どもが2人いることは賛成なんです。でも、もし、2人目が生まれたら、その子どもは私と同じようになってしまう可能性があると思うと、絶対に産まないほうがいいと思ってしまって……」。A子さんのホンネは「産みたい」でもあったのです。

今までさまざま家庭の相談にのってきましたが、A子さんのように、親が上の兄弟におカネをかけ『その犠牲になってしまった末っ子』のケースは、実は少なくありません。

「いくらかけられるか」を考え、最善をつくす

こういったケースに陥ってしまうのは、教育費を子ども1人ひとりに対してきちんと考えていないからです。

もちろん「予定外に子どもができてしまった」ということも、場合によってはあるかもしれません。しかし、教育費を考えるときには、子ども1人ひとりに対して、おおまかでいいので進学コースを設定し、いつの時点で、いくら費用がかかるのかをきちんと計画して準備することが重要です。また「いくらかかるか」も大事ですが、「わが家の場合はいくらかけられるか」を冷静に判断して、その中で最善をつくすという発想も大切になります。

今回のA子さんのように「自分だけおカネをかけてもらえなかった」ことは、つらい経験かもしれません。しかし世の中を見渡すと、「教育にたっぷりおカネをかけてもらった人が、すべて幸せでかつ稼げているか」というと、そうではないケースも多々あります。教育は決まった答えが必ずしもないものですが、金銭面だけではなく、子ども1人ひとりの性格や思考などを総合的に考えないと、何が良い教育かはわかりません。

実は、その後、私のところに旦那さんも来ていただいています。というのも、A子さんの想いを聞くうちに、旦那さんにもA子さんの想いを共有し、一緒に考えた方がよいと思ったからです。A子さんと旦那さんと私の3人で「2人目を産んだら家計はどうなるのか」のシミュレーションをいろいろなパターンでしてみました。「2人目を産んでも大丈夫」との旦那さんの熱いプレゼンに胸を打たれ、結局A子さんは、2人目を出産しました。

「過去のトラウマにとらわれていましたが、産んでよかったです。高山さんのおっしゃるとおり、子どもはすべて同じ教育がいいとは限らないですよね。それに、子育てが落ち着いたら私も大学に行こうと思っているんですけど、親がすべて与えてくれなくても、自分の力で夢は実現できますしね」。後日筆者のところに来てくれたA子さんは明るい声でこう話してくれました。Aさんはいったん休職、後日仕事に戻る予定です。夫も、家事への一段の協力を実践しているそうです。

「子どもにとって何がいい教育なのか」――。これはほとんどの子を持つ親の悩みだと思いますが、私自身も6歳の子を持つ親として、とても考えさせられる事例でした。

高山 一惠 ファイナンシャルプランナー(CFP)

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たかやま かずえ / Kazue Takayama

株式会社Money&You取締役。2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後、(株)Money&Youの取締役就任。女性のための、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる場「FP Cafe」を運営。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評。著書は『やってみたらこんなにおトク!税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『税金を減らしてお金持ちになるすごい!方法』(河出書房新社)、『パートナーに左右されない自分軸足マネープラン―ひとりでも生きていける力を身につけよう』(日本法令)など多数。

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