日米会談は安倍首相の命取りになりかねない トランプ大統領との蜜月はもう終わっている

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安倍首相はまた、米国が北朝鮮と協定を結ぶことで日本が事実上の孤立状態になることを恐れている。北の長距離ミサイルを抑制させることに力を入れるあまり日本が中距離弾道ミサイル攻撃にさらされることにならないよう、再保証を求めている。

「鉄鋼・アルミ関税免除に成功して帰らなければ、安倍首相にとっては死の宣告と同じだ」と、前出の米政府高官は話す。「拉致問題については、トランプ大統領が、実際に北朝鮮側に話を持ち出すかどうかは疑わしいところだが、持ち出すとは言うだろう。しかし、北朝鮮に関してトランプ大統領が安倍首相に対して言うことは、すべてリップサービスとなるのではないか」。

FTA交渉を迫られる安倍首相

一方、トランプ大統領は、貿易不均衡に対して厳しい姿勢を示す必要がある。たとえそれが米金融業界を怒らせ、輸出農作物の生産などにかかわる支持者を失うリスクがあるとしても、だ。

共和党幹部の会合ではTPP再加入について話したトランプ大統領だが、その翌日には完全に再交渉されなければ参加はないとも表明している。また、日本については、「何年も私たちを貿易において苦しめてきた国」とツイッターに投稿しており、2国間貿易協定について協議される予定である。

安倍首相が鉄鋼・アルミ関税の免除を得たいのであれば、米国側のメッセージは明らかだ。「米国側には、日本が2国間貿易協定(FTA)に関して、一歩も譲ろうとしないという失望感が広がっている」と、前出の高官は話す。

安倍首相は現在、非常に難しい立場に立たされているが、安倍内閣の高官はこの可能性を拒否する声明を発表し、TPP11の交渉再開にも反対した。さらに重要なのは、自民党の重要な支持基盤のひとつである農村部が、2国間交渉に入ることに強く反対していることだ。交渉の焦点が、TPPですでに合意済みの事項を超えた日本の農産物の市場開放圧力にあることは確実だからだ。自動車もまた、米国の議題のトップに上ることは間違いない。

安倍首相は尻込みするかもしれないが、明確なタイムリミットを設けずに2国間FTA 交渉を行う意思があることは、口頭で示す必要があるかもしれない。TPPへの加入を再検討するというトランプ大統領の意思表明が少しはこの隠れみのとなってくれるかもしれないが、日本側はそれが大方無意味であることをすでに知っている。

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