5年後、ジャーナリストは食えますか? 【キャリア相談 特別編】 第2回

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昔の取材相手にまだ電話できるか

塩野:しかしながら、そのパワーがいつまで威力のあるパワーなのかを考えるべきですし、それで培ったネットワークをずっと保持できているかも考えるべきです。

私はこれまで記者の方に100人以上会っていますが、関係性をきちんと構築できる人とできない人に、真っ二つに分かれます。

ビジネスマンと経済記者って、一緒に育っていくところがあるんですよ。若いときに出会って両方とも偉くなっていく。で、偉くなったときに記者がそのビジネスマンにまだ電話ができる関係かどうか。電話ができる人は極めて少ないでしょう。

佐々木:断絶しちゃっているのですね。

塩野:ええ。やっぱり記者も忙しいですし、ある種、“情報ソース”を使い捨てにしてしまうのです。私が非常に尊敬しているフリーのジャーナリストは、政府高官からブラックな人まで、いつでもちゃんと電話できるようにケアをしています。

佐々木:そういう人間的なケアができるかどうかが、大事なわけですね。

塩野:それができていれば、組織を離れて独りになったときに生きてきますから。

深い分析をするには勉強が必要

塩野:あとはやっぱり勉強し続けることでしょう。

池上彰さんの本に、たしかこんな話が載っていました。サツ回りのときに経済書を読んでいたら、上司に「おまえ、そんな本を読んでいる暇があったら、夜討ち朝駆けに行ってこい!」と怒られた。でも、池上さんは夜討ち朝駆けに行ったうえで、ちゃんと勉強もしていた。それを怒られてしまうのはきついと。

じゃあ、新聞社の経済部にいる日銀担当の人の中で、経済学の修士号以上を持っている人は何人いるのか。ジャーナリストが学者と競い合っているんだったら、修士レベルの勉強は当然、必要ですよね。

佐々木:そういう意味では、メディア企業に修士号を取った学者やコンサル、アナリストなど、外部の血をもっと入れてもいいのかもしれないですね。

塩野:何を付加価値とするかです。夜討ち朝駆けで特ダネを取ってくる世界は、抜きつ抜かれつの即時性をループの中でやっている。それより他社に一歩遅れてもいいから、もっと深い分析をしようという世界にいくのか。

佐々木:どっちを重視するかによって、求められる人材がまるで変わってくる。

塩野:会社としてどういう方針を取るか、経営戦略です。今は完全に過渡期ですよ。

(構成:上田真緒、撮影:梅谷秀司)

※ 続きは10月16日(水)に公開します

塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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