「漫画村」、接続遮断をしたって死なないワケ 「サイトブロッキング」をしても効果は薄い

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サイトブロッキングは、インターネットの戸籍謄本ともいえるDNS(名前解決サーバー)への名前参照(URLに相当するIPアドレスの参照)を制限することで実施される。

インターネット上に海賊版コミックスを配信するサーバが設置されたとしよう。そのサーバーのIPアドレス(固有のコンピュータを示す数字)に対して、文字(URL)からIPアドレスを参照できないようにすれば、リンク先をクリック/タップしてもサーバーにたどり着けなくなる。

DNSは一般的にはインターネット接続業者が提供しているため、接続業者がブロッキング対象サイトのURLに接続することを拒否して、閲覧者が容易に接続できないように細工する。これがサイトブロッキングだ。

その気になれば海外業者のDNSも使える

しかし、重要な点はDNSから海賊版サイトが消えてなくなるわけではないことだ。協力を依頼した接続業者が用意したDNSでの名前解決処理を行えないにすぎない。

DNSは必ずしも接続業者だけが提供しているものではなく、その気になれば海外業者のDNSを利用することだって可能だ。さらに専用アプリなどを用いるなどさまざまな回避方法も考えられるなため、効果はきわめて限定的なのである。

政府は新たな海賊版サイトへのアクセスを遮断するために、官民の協議体を設置して適用基準などを検討するという。その上でサイトブロッキングの法制化を目指す。

菅義偉官房長官は会見で「あくまで臨時的かつ、緊急的な措置」と強調している。なぜ臨時的かつ、緊急的な措置が必要だと判断したのか、具体的な判断材料の開示が必要だろう。誰もが納得できるような客観データに乏しいようであれば、強権的ともいえる今回の措置には批判の声が集まる可能性もある。

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