年収急増!米国「プログラマー養成所」の正体 大学は不要?20代で年収1000万円超えも

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「エンジニアを求めるのはテック(IT)企業だけじゃない。テックと何かを合わせたビジネスにこそ需要がある」。ロサンゼルスが本拠の学校、コードスミスを創業したウィル・センタンス氏はそう強調する。

ブートキャンプでは朝から晩までひたすらプログラムコードを打ち込む日々が続く(記者撮影)

映画産業が集まるロサンゼルスは、ネットフリックスやHuluといった動画配信サービスなど、エンタメとITを組み合わせた企業が多い。近隣には、今年初めにアップルが映像制作のスタジオを開設。「アド(広告)テックも盛ん。待遇も非常にいい」(センタンス氏)。同校は昨年、ニューヨークに進出。「銀行や保険、不動産など、テックと既存産業の組み合わせを推し進めたい」(同)。

これまでに300人の卒業生を出し、平均年収は10万~11万ドル(約1100万~1200万円)。未経験の場合は事前の無料講座受講や自習を求めるなど、入学時のレベルを高くしているため、卒業時のスキルが他校よりも高いのだという。

自分の好きなこと×プログラミングの可能性

2016年にコードスミスを卒業したアイザック・デュランドさん(下写真)は現在、ロサンゼルスにある荷物のストレージサービスを手掛けるスタートアップで、アプリ開発に従事する。年収は20代後半にして10万ドルの大台を突破。デュランドさんは入学前、オンライン教育の企業でマーケティングに従事していた。エンジニアの様子を間近で見ながら、「実際に自分の手でツールを作って人の役に立ちたいと思ったのがきっかけだった」(デュランドさん)。

ロサンゼルスのコードスミスを卒業した、アイザック・デュランドさん。大学では演劇専攻だった(記者撮影)

前出のエピコーダスに通うエルレイ・ベルモンティさんは現在、学校のカリキュラムの一環で5週間のインターンシップ中だ。飲食店で働きながら、十数年にわたりダンサーとして活躍してきた。だが、深夜まで飲食の仕事をしながら、ダンスの練習やショーに明け暮れる生活には「ワークライフバランスがなかった」(ベルモンティさん)。生活にゆとりを持ちたいと考え、以前から興味のあったコンピューターの仕事を思いついたという。

「ドローンをダンスショーで使いたい」。ベルモンティさんにはそんな夢がある。光を出したり、人に合わせて動いたりといったことを実現したいという。自分でドローンをプログラミングしたいと考え、ブートキャンプへの入学を決めた。

エピコーダスで学んだ言語は「Ruby(ルビー)」だったが、「今後は、多くのドローン企業が使っている『Python(パイソン)』を勉強したい」と話す。高校の数学教師向けにテスト作成ツールを開発するスタートアップでインターンをしながら、ドローン企業への就職を目指している。

プログラミングは、学歴や文系・理系を問わず努力次第で身に付けられる希有なスキルだ。さまざまなバックグラウンドの人々がテクノロジーを学ぶことで、あらゆる産業が変わる可能性がありそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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