内向き志向から決別、三井住友カードの「脱国内」アジア戦略

拡大
縮小

共存共栄の事業モデル オセアニアへ拡大も視野

逆もまたしかりだ。日本からの出国者数は全体で約1729万人。うち提携地域への出国者数は約1193万人で、全体の69%に相当する。

この膨大な旅行人口の流出入が高い購買力も携えているだけに、やはり、アジア地域が真っ先のネットワーク・カバーエリアとなった。しかし、だからといって、それで満足するわけではない。

「次はほかのアジア諸国もあるが、オーストラリア、ニュージーランドも提携先として具体化させていく方針だ」

月原紘一・三井住友カード社長は次の一手をすでに戦略化させつつあることを明言する。

12月のサービス開始時は各メンバーが30加盟店を開放。合計300加盟店のネットワークでグローブパスプログラムが始まる。わが国では、高島屋、三越といった百貨店、上新電機、ヨドバシカメラなどの家電量販店のほか、ホテル、玩具店、衣料品店などがグローブパスの加盟店として参加する予定だ。

ちなみに、三井住友カードが提携する、中国のカードブランド「銀聯」の日本国内加盟店数は、業務開始時(05年12月)の200店から08年8月には1万1800店に急増中。小売店などの加盟ニーズの高さを物語っている。

その一方で、クレジットカードビジネス、中でも伝統的な国内カード会員事業はすでに飽和状態と言わざるをえなくなっている。新貸金業法など法律改正の動きに伴って、事業展開に岐路が訪れつつあるという見方も根強い。

そこで、有力カード会社は海外戦略を強化中だが、ただ「進出しました」というだけで成功を収められるほど甘くはない。やはり、進出先の同業者との共存共栄によるビジネスモデルを構築していくのが早道だ。グローブパスがそのプラットフォームとして、今後、いかにネットワークを拡充し、サービスコンテンツを充実化させていくか。ある日、巨大なカードネットワークに大化けしている可能性もなくはない。

(浪川 攻 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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