発明家が異例の勝訴 アップルに賠償命令 今後の焦点はクリックホイール特許の価値算定

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賠償額100億円を目指す

「私のような個人発明家の特許の価値が認められたことの意味は、ものすごく大きい」──。

S氏はこう話す。「これまで日本では大企業が手を取り合って個人の特許を押し潰しており、知財立国どころではなかった。それが変わるきっかけになればいいと思う。個人発明家のためにも戦い続ける」

よって、一審判決に満足しているわけではない。代理人である上山浩弁護士(日比谷パーク法律事務所)は「クリックホイールはアイポッドの価値の重要な部分を占めており、3.4億円はあまりにも少ない。高裁では引き続き100億円を主張していく」と話す。

アップルは地裁判決を受けて即日控訴した。高裁がアップルの控訴を受け付ければ、審理の結果、S氏の逆転敗訴ということもありうる。一審で勝訴した喜びもつかの間、S氏は再び、巨人アップルとの厳しい戦いに挑むことになる。

(撮影:梅谷 秀司)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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