『陽だまりの彼女』は男子のための作品だ 恋愛青春映画の名手、三木孝浩監督に聞く

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――ビーチボーイズの曲を使用するとなると、許諾をとるのも大変だったのではないでしょうか?

プロデューサーも絶対に使いたいと言ってくれました。この曲は物語にとっても大事な要素なので、そこは揺るがなかったです。

――許可はすんなり出たのでしょうか?

そうですね。この曲でなければ成立しない物語だったので、先方にもその点をしっかりと伝え、快諾していただきました。

――これまで発表した3本の映画は、コミックや小説などの原作があるものでした。原作との距離感のとり方はどうされているんですか?

僕にとって、原作がある作品というのはやりやすいのです。僕が多く手掛けてきたPVというものは、アーティストのいいところを、世間にいかにアピールするかということに心を砕きます。歌のよさ、カッコよさ、かわいさといったアーティストの魅力を増幅するために存在するものだと思っています。一方、原作がある作品を映画化するのも、原作の魅力をいかに引き出して、映像化していくのかということなので、僕にとっては同じことなのです。ですから、映画を手掛ける最初の入り口が、原作がある作品だったということは、今までのPVのアプローチに近いなと思っていました。

――とはいえ今後、オリジナルを作る機会もあるのではないでしょうか?

そうですね。このまま作り続けていく中で、そういう欲求が出てくることもあるかもしれません。ただ、今のところは0を1にする作業よりは、1を10にする、100にするという作業のほうがモチベーションは上がりますね。

(C)2013『陽だまりの彼女』製作委員会

男子にこそ見てもらいたい

――今回の原作は「女子が男子に読んでほしい恋愛小説」ということですが、ラブストーリーは女性のためのものという先入観があってか、敬遠してしまう男子も多いのではないでしょうか? 

原作は確かに「女子が男子に読んでほしい」というキャッチコピーですが、僕は男子にこそ見てもらいたい映画だと思っています。自分なんてと思うイケてない男子が、好きな女の子に、逆に好きになってもらえるというのは、男子の願望だと思うんですよ。越谷先生の男子的な願望が詰まっている作品なので、むしろ男子のほうがハマれる映画だと思います。

――そういう意味で、男子にみてもらうために気をつけたことは?

松本潤くんをキャスティングしたことじゃないでしょうか。映画『(500)日のサマー』のジョゼフ・ゴードン=レヴィットなんかもそうですけど、めちゃくちゃイケメンな人がイケてないキャラクターを演じてくれると、男の子はすっと物語の世界に入り込めると思うんですよね。他人からはイケてないように思われているけど、実はみんなが気づいていない魅力を持っているというのは、ある種の男子の願望ですからね。

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